第7話
「どうすれば……いいんだよ」
「あれ? 日登君?」
「高嶺?」
ふと、声がした方向に顔を向けるとそこには同じクラスの高嶺紗友里がいた。
彼女は端正な顔立ちにキリッとした瞳。腰まで伸びる黒髪は透き通るように美しくて、シルクのような輝きと柔らかさがある。まさに大和撫子という言葉は彼女の為にあるようだと思っている。
その美貌に加えて、優しくて、品も礼儀もある。学年のトップの学力も持ち、また生徒会長として生徒や教師達から絶大な信頼を寄せられている。
教室の隅で黙って空を見ている日陰者の俺からすれば天上人だ。
正に月とスッポンと言えるくらい身分の差があるにも関わらず、彼女は今日のようにしょっちゅう俺に話しかけてくる。
他愛もない世間話を持ち掛けることもあれば、何か頼み事をしてくることもある。
「どうして、こんなところにいるんだ?」
「その……買い物の途中だよ。日登君はここで何してるの?」
「いや、ただ空を見上げていただけだ」
俺はそう言うと、高嶺も揃って空を見上げる。
「日登君って空が好きだよね」
「そうか?」
「だって、休み時間とかずっと窓の外見てるよね?」
「……よく見てんな」
「だって、皆が騒いでる中で一人だけ、静かにしていれば嫌でも目につくよ」
眉をしかめる。
ほんの僅かな休み時間の間も見られているということを認識すると、ストーキングされているみたいで背筋に寒気が走る。
クラスの一部では高嶺が俺に好意を抱いているなどと噂が立っている。
無論、噂でしかなく事実かどうか定かではない。
「そういえば、面談はした?」
「ついさっき。大した話はしなかったけど」
高嶺は「そっか」と呟くと、俺の隣に座る。
会話が弾むことも気まずい空気と静寂が流れる。正直なことを言うと俺は高嶺があまり得意じゃない。
彼女は俺に対して何か期待しているような感じがするのはわかる。
一定の信頼を得ていることは嬉しいがそんなものを得られる程のことしたことはないし、俺の中ではただのクラスメイトでありそんなに深い関係でもない。
そもそも、信頼得るに値することをした記憶がない。
つくづく、高嶺紗友里という人物がわからない。
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