金木犀

コーヒーの匂いが部屋中に漂い始める朝の4時

昨日セットしておいたコーヒーマシンが動き始める時間


 「ふぁ~、今日も一日気張りますか!」


まだ日が昇っていない薄暗いこの時間

出勤までの一時間を優雅に過ごす

これが私の仕事前の唯一の楽しみ


眠いと訴えるからだを無理やり起こし

まずはできたてのコーヒーをブラックで一口

コーヒーを胃に突然入れるのは良くないっていうけどこれがないと体が言うことを聞かない

次に朝ごはんを食べながら残りのコーヒーを飲む

今の情勢をどうの言っているテレビをBGMに

栄養を得た体は次第に起きてくる


 「今日は新しいアイシャドウ使ってみようかな。」


身だしなみを整え終わった後

少し日が差してきたベランダでエスプレッソを飲む

これが最高においしい


 「今日は風がきもちいい。このエスプレッソがないと一日が始まらないのよね」


ふと甘くなんとも懐かしい匂いがした

どこからか風に乗って来たのだろうか


 「これ…何の匂いだろう。金木犀かな?そういえば最近見てないな。」


小学校の中庭に咲いていたのを見て以来だからだろうか

なぜか初恋の男の子のことを思い出した

走るのが早いだけでかっこよく見えたあの頃


ただ好き同士で入れることが嬉しかった

年を取るとあの頃のような感覚がなくなってしまった気がする

毎日同じような生活をしているとそれに慣れてしまう

こんな香りにも気付かないなんて


「なんか今日はいい日になりそう!」


そんなことを考えながら今日もいつもと変わらない景色に溶け込んでゆく

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