棚ぼた気分(前編)

「なぁともや、ちょっとだけ相談に乗ってくれないか?」

「どうしたんだいきなり、お前が相談なんて珍しい」

「俺ってさ、酒飲んで裸踊りとか人前でやったことないよな…?」

「はぁ!?いきなり何を言い出すんだ?そんなこと俺の前でやってたら写真でも撮って素面のお前に見せてるよ」

「それはそれで最悪だけど…、ともやだったら確実にそうするよな。」

「それで、なにかあったのか?」



俺には昔から自分がしたことないような記憶がある。

それにずっと悩まされている。

しかも俺目線の記憶だから本当かどうか確かめないと分からない。

質が悪い…



「昔からそういったことに悩んでいたよな。一回お祓いとかにでも行った方が良いんじゃないか?」

「お祓いか…信じられないんだよな。実際これお祓いが効果あるのか分からないし」

「まぁ、信じられないのは分かるけどよ、物は試しに行ってみたら何かわかるかもしれないぜ?」

「それもそうだな、今度行ってみるわ」



正直このバカげた記憶に関してはずっと悩まされているから解決はしたい

あまりにもバカげていて言いずらいのかもしれない…

ともやに限って言わないっていうのは無いとは思うが、可能性は無きにしも非ずって感じだよな

たしかにともやなら俺が酒を飲んで腹踊りしていたら写真に撮りそうだ

でもこの前あった座布団を使ってヘッドスピンとかだったら撮らないかもしれない

はぁ、1人で考えていても答えがないから埒が明かない

今度の休みに行くか…



「こんにちは~」

「いらっしゃいませ。どのようなご用件でしょうか?」



うわ、かわいい

こんな子がお祓いしてるのかよ

緊張するわ



「あの、今回お話だけでも聞いていただけたらと思ってきたんですけど、大丈夫ですか?」

「えぇ、平気ですよ。お名前を苗字だけでも構いませんのでお伺いしてもよろしいですか?」

「野路です。」

「野路様ですね。お話を聴いてほしいとのことですが、最近何か困ったことでもありましたか?」

「最近というか、以前からなんですけど―」



俺は今まで悩んできた記憶について話した。

やった覚えがないこと

自分の目線で記憶があること

話している声は入っていないこと


母親以外にこんなに女性に親身になって聞いてもらったことがない俺にしたらなかなか新鮮な感じだ


あとなんて言ったってかわいい



「これで話したかったことは全てです。聴いて下さってありがとうございました。」

「話して下さりありがとうございます。お話して頂いた内容から推測にはなってしまうのですが、恐らく前世の記憶ではないかと思われます。」

「前世!?」



何ということだ

俺は、今まで顔も見たことの無い前世の記憶に悩まされてきたのか…

そりゃ身に覚えがなくても当然だよな

これで俺がやったわけじゃないと知れたから少し心が楽になったが

記憶が消せるわけじゃない

いや待てよ、消せないと言われたわけじゃない

消せるのであれば相談してみるしかない

最後の望みだ…



「あの、この記憶ってどうにか出来るんですか?」




-続く-

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