VS潜水艦4.1『エアプレーンの法則』

「イリス様、今回は無血で切り抜けたいと考えています。相手のでかた次第ですし、イリスヨナのスペックをひとつ開示することになりますが」


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「というわけで、遅滞戦闘というか、消耗戦というか。相手を疲れさせて諦めさせる作戦で行こうと思うの」


海洋で最強を誇り、燃料補給の必要なしに理屈の上では無限に作戦行動が可能な古代戦艦だが、その活動限界は巫女に制約される。


「こちらの探索範囲は、どうやら相手が想定しているよりはるかに広いわ。

旋回式魚雷発射管からの魚雷無力化と組み合わせることで、相手に攻撃させずにこちらは安全を確保できる。

その状態で包囲網をつついて、彼女たちには昼夜を問わずに動き続けてもらう。

相手には巫女の体力と精神力という限界があるけれど、イリスヨナにはそれがない。

外乱がなければ、おおむね上手くいくと思うわ。

敵艦側には援軍がありうるかしら?」


フーカは考えるまでもなく即答する。


「コレッジオが来ているならば、戦艦『アンジェ・リコ』が随伴している可能性が高いわ。

アンジェ・リコは大口径の艦砲と300m級の船体を持つ、強力な戦艦よ。

それに古代戦艦自体の性能に加えて、巫女が優秀で操艦精度も高い。コレッジオよりも長期作戦ができる船でもある。

これが出てくると厄介ね。いまここにいない理由は、機関か巫女の不調が考えられるけれど、長期戦になれば参戦がありうるわよ」

「戦艦『アンジェ・リコ』ってこの艦かしら」


発令所前面のVUHDに静止画で映す。


「そうよ。これは洋上で撮った写真かしら? いったいどこでこれを?」

「行きの航路上で戦闘になったときに記録したのよ。アンジェ・リコはこのあと撃破したわ」

「そう」


アンジェ・リコの画像を見つめたまま、フーカはそれだけ言った。


もしかしなくても、巫女とは顔見知りなのだろう。

フォローは必要ない様子なので、話を進める。


「これ以上の敵の増援はないと見ていいのかしら?」

「ええ。他の艦も演習や役割があるもの。簡単には抜けられない。

多数の古代戦艦を動かせば、大国アルセイアの勢力に気取られる心配も増える。

それに『コレッジオ』と『アンジェ・リコ』は巫女同士の仲が良いのもあって連携に優れるのよ。

彼女たちを組ませたなら、そこに他の艦を追加投入しても連携を乱すだけになる」


古代戦艦の不安定性を考えれば、数を増やせばいいというものでもない。


『エアプレーンの法則』と言うんだったか。

故障を恐れてエンジンを増やすと、故障率も倍に。

1隻でも故障すれば艦隊は足並みが乱れる。故障の確率は古代戦艦を増やすほど増える。


この作戦で1隻で2隻を相手取る、イリスヨナがつけ入るスキでもある。

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