VS戦艦4 / 降り注ぐ小さな爆雷

敵戦艦に小さな爆雷が降り注ぐ。


戦艦の巨大砲塔は、現代艦艇の近接防御火器とは違う。

さすがに飛翔体を狙って撃ち落とすことはできない。


あるいは古代戦艦の兵装システムならば可能なのかもしれないが、少なくとも今回はそうはならなかった。


対潜水艦の投射爆雷。

空中で飛翔体から子弾に分解して、敵戦艦に降り注ぐ。


本来なら水中に入ってから接触起爆する爆雷は、イリスヨナから介入したことで、海上の戦艦に触れた最初の衝撃で弾ける。


焼夷弾ではないから甲板が火の海にはならない。

妨害装備ではないから煙幕は上がらない。

対潜装備だから戦艦を貫通するには至らない。


けれど破片が舞い、濡れた船体は蒸気を上げて視界を歪める。

砲塔をヘコませ、砲身を揺さぶり、回転砲塔のターレットを狂わせる。

ついでに、艦橋のレーダ類もいくらか破壊できた。


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それから、魚雷攻撃の結果。


4発のうち2発が敵の艦砲で破壊。

R種魚雷が敵操舵にダメージ。

I種魚雷の撃破狙いが命中。


でもこれは。


「マズったわ」


近接爆発による衝撃と破片ではなく、成形爆発による装甲貫通。

角度などの狙いが必要だが、当たればダメージの大きい攻撃方法だ。


敵戦艦に命中したそれは、敵艦をわずかに傾けるまで至ったものの、浸水はダメージコントロールされて区画で止まり、すぐに復元する。


聴音と温度測定の限りで、内部火災や誘爆は起こっていない。

つまり敵艦はイリスヨナの最大火力を受けて健在。


このまま4度ほど攻撃を続ければ、敵戦艦は撃破できる。

けれど。


副長は冷静に告げる。


「あちらはもう防御はしないでしょうね」

「守るより、イリスヨナに致命傷を与える方が早そうだものね」


どんな巨大戦艦だって、魚雷を2発も受ければ、ほとんどは撃沈か大破して戦闘不能になる。

だが相手は、私の知る第二次大戦の戦艦ではなく、この世界の古代戦艦。

さっきも傾いた戦艦から、できないはずの砲撃をしてみせたばかり。


相手は舵が悪くなり速度も落ちたが、このままイリスヨナがすれ違ってから遠ざかる間に体勢を整え、艦砲射撃でイリスヨナを撃破できる。


それだけじゃない。

掌砲長が告げる。


「攻撃するには近づきすぎました」


前方発射管は疾走開始前に敵艦を抜き越してしまいそう。

後方の旋回式魚雷発射管を使っても、魚雷の旋回半径が急すぎる。


「このまま衝角戦は分が悪いですね。考えられるのは、攻撃か撤退か」


副長が提案しているのは、

- やりすごして距離を取り、バイタルパートへの命中を期待しての攻撃続行

- 相手の艦砲が当たらないことを期待して、全力で距離を取る射程外への逃走

の、いずれかということだ。


確かにどんな戦いも、最後はどこかしら運任せ。


でもその前に、やっておきたいことがある。

もとい。

「運に任せるより、捨て身の努力よ。先にやっておかなければならないことがあるわ」

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