トーエとチセ2

「でもトーエさん、チセさんを育てながら仕事って大変なのでは?」

「そんなことはありませんよ。チセはおとなしすぎて逆に心配になるくらいの娘ですから」

「そういうのわかります。イリス様もおとなしくて、文句のひとつも言ってくださらない方なんですよ。

だから実は我慢しているんじゃないかって、心配になるんですよね」


まるでママ友の会話のような内容で、考えていた別のことを思い出す。


「でも、おとなしい子供ばかりだったら、母親も少しは自由時間が増えるのかしら」

「例の、保育園を作ろうかという話ですか」


ミッキが反応する。

漁業をするにあたって、各家庭から調理に慣れた母親という労働力を雇って使えるようにするためだから、慈善事業というわけではない。


「まあ、これもお金を出したら解決する問題でもないけれどね。

この世界で子供を他人に預けてもらえる信頼を、どう構築すればいいかわからないもの」


そして、その信頼を担保する保育園の仕組みとデザインも必要だ。


「トーエさんなら適任かもしれないわね」

「どうでしょう。チセはおとなしすぎて逆に心配になるくらいの娘ですから」


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「姉さん、図面上のパーツの色分けについて相談に乗って欲しいのですが」

「いいわよ。でもその話、長くなるんじゃない?」


ミッキは少し考えてから、私を見て。


「ヨナさん、しばらくチセと遊んであげてくれませんか。興味があるんでしたよね」

「それはいいけれど」


チセ、さっきから一言も喋っていない。もしかして人見知りの娘なのでは。

トーエが私たちのことを気遣う。


「ミッキ、ヨナ様にそんなことしてもらうのは」

「トーエさん、私はかまいませんよ。チセさんがいいならですけど」


チセは睨むでもなく、むしろ心ここにあらずといった表情で、ただ私をじっと見つめている。


「チセ、どう?」

「ん」


それだけでトーエとチセの間で話が通じたらしい。


「じゃあすみませんが、チセのことしばらくお願いします」


チセは椅子から降りて、私の手を引く。


「わたしのことは、チセでいい。ふたりの邪魔になるから、あっちの部屋に」

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