ミッキによる『人造艦船』建造構想2 / 大きい艦船のほうが作るのが楽?
「大きい船を作れば他のことが楽になるのはわかったわ。
でも最初の疑問に戻るけれど、作れるの?」
「建造についても、実のところ大きい方が都合が良いのです。
理由は二つあります。一つ目として、大きな船体は巨大建築物とみなすことができます。
ヨナさんも、王都で高層建築をご覧になりましたよね?」
「ええ。それは見てすごいと思ったからよく覚えているわ」
「巨大建造物は金属製の大きな人工物です。すべてではありませんが、艦船の建造にも、巨大建築物の建造技術と知見が転用できます。
強度と重量制限についてよく考えられて設計されており、経験をもとにした多くの知見が貯まっています。
巨大な人工物にありがちな問題、たとえば『ねじれ』や『固有振動数』に対処するための知見がすでにあります。
大型船を、少し特別な建物として扱うことができれば、大型構造物の知見を転用できます。
建造工程やスケジュールも目算が立てられる。
部品に切り分けて既製品を利用したり、製造員の確保もしやすい。
材料費さえ用意できるならば、結果的に建造は安上がりになります」
ああ、なるほど。
部材だけじゃない。
『造船員』を確保するには、いかにも時間とお金のかかる専門教育が必要そうだけれど、『建築作業員』であれば既にこの世界にある土建業界から集められるのか。
「大きい船のほうが都合のよい理由の2つ目は、ヨナさんの『現代艦艇』の記憶が使えることです。
私たちが持っている『人造戦艦』についての知見、つまり、ヨナさんの『現代艦艇』の記憶は、全て大きな艦船についての知識です」
「その節はなんというか、すみません」
私は、空母や戦艦など大きな艦船が好きで、ヨットやクルーザにはそれほど興味が無い。
だから小さい船については、役立ちそうなことは何も知らないし思い出せなかった。
「でも『現代艦艇』知識って、そこまで重要?」
「はい。河川用の小型漁船の知見は惜しいですが、巨大建築文化が持っているたくさんの蓄積と、ヨナさんの現代艦艇の記憶には、それを捨てるだけの価値があります」
私の自信のなさに反して、ミッキはこともなげに断言した。
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「ああ、それと」
と前置きしてから。
「ヨナさんだって、当初プランよりも艦船のほうがお好きですよね」
(ここまで説得の理屈を重ねておいて、最後にそれはズルくない!?)
エーリカ様が紹介したのは、澄ました顔してアクセルベタ踏みの、かなりヤバい人物だったらしい。
でもまあ、当然か。
この世界にまだない、実現できるかもわからない船の構想を、世間の端に籠もって温めていたような人物だ。
「まあ、そうね」
時間は決して巻き戻せないけれど、時計を前に進めることはできる。
ミッキの提言の前のめりさに、私は表情を引き締めておくことができない。
見つめ合うミッキも笑ってくれているような気がした。
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