ミッキによる『人造艦船』建造構想1 / 初期艦は海防艦『択捉』
「ところで、最近しているシミュレーションは大きな船体ばかりよね。
将来的には必要になるだろうけれど、初期艦として建造予定の10mサイズのシミュレーションはしなくていいの?」
ミッキは答えた。
「それなのですが、ヨナさんに納得してもらえるなら、当初の計画を変更しようと考えています」
「へえ、どういう風に?」
「10m級ミサイル艇ではなく、初期艦として100m級の海防艦を建造します」
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「検討した結果、初期艦には100m級の海防艦を建造するべきだと考えます」
「それは、いきなり作れるものなの?」
100mというと、択捉型海防艦の80mより大きい。
それはもう巡洋艦なのでは?
私たちの最初の計画は『最初に小さな船を作って、だんだん大きくしていく』という方向だ。
つまり、
- 既知の河川用漁船をそのまま鋼鉄化する。
- 艦砲、発令所、レーダ、船体と、ひとつずつ新しい技術を入れて試していく。
- 繰り返してすべての艤装を『人造艦船』に置き換える。
初期艦は、この世界の河川用漁船を同サイズのまま鋼鉄化した小さい船を作るという、それなりに現実的であろうプランだった。
私たちが最初に考えていた構想と違うのは別に良いのだが、いきなり100m級を建造するというのは、冒険がすぎるのではないだろうか。
「ヨナ様と私で考えていた最初の計画は、すでにある技術から段階を踏んでいく、技術開発のセオリーに従った正しい考え方です。
ですが私たちが作ろうとしている鋼鉄の船、『人造艦船』について検討していくと、実はこの方法は向いていません。
むしろ、最初から大きい船を作るほうが楽になります」
ミッキが説明をはじめてくれたので、私は聴く体制に入る。
「まず、すでにある木造船を鉄に置き換えると、どうしても船は重くなります。
ここで大型化のメリットとして、船体長を2倍に伸ばすと、体積と浮力は3乗で増えます」
ただし、建造材料費も2乗で増えますが、とミッキは付け加える。
「つまり初期費用をなんとかする必要はあるけれど、大きな船を作れば、浮力を得るため軽量化などの工夫はいらない。
考えることが減って、ひとつ楽になる?」
「大まかには、そうです。
そして、大きな船の内容積と浮力が、私たちの作ろうとしている艦船には重要です」
「どういうこと?」
「艦砲、魚雷、爆雷、燃料弾薬。私たちの艦船に必要なモノは、すべてが重くて大きいですから」
確かに、小さな船にはとても乗りきらないし、載せたら自重で沈みそう。
小柄な船体に加えて、艤装を小さく軽く再設計するには、気の遠くなるような時間とお金がかかる。
「大きな船なら積めるペイロードに余裕がある。
だから艦内設備のほとんどを既にあるものを買ってきて済ませられるということね。
作るより、時間とお金が節約できると」
ミッキはうなずく。
「船体だけ小さく作っても、この世界にはまだ、中に積むことのできる艤装がありません。
艤装のない戦艦はただの置き物です。つまり石のタヌキです」
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