仏像

何をおいても大きさだ 仏像を求めるときは

一輪挿しの花瓶のような 手にずっしりと重たい金銅仏か

はた 民話の巨人のごとき大木を彫り上げた大仏か

ここで提唱するのは ちょうどクスノキほどの高さの寄木造である

雀の涙さえ受けとめかねる小像のてのひらとは違い

その仏像はひとすくいの水で水田を満たす

見上げれば遠すぎず 

まぶたをほとんど閉じた目がそこにあるのがよい

風に波うつ草原のようにやわらかな服のひだ

妙なる静寂を奏でる宝玉の装身具

十万億土の遠きを見やりながら

膝元に座した 百年の寿命も持たぬ人間を見下ろしている

漂い出すビャクダンの匂い

仏師の至上命題は生きている仏像をつくること 

けれど

水晶の唇は微笑するにはかたすぎ

絹製のきよらかな内臓が生んだのは敬遠だった

海との不可解な連関

あまりにたくさんの化仏を乗せたために重すぎる光背

土踏まずを失った足裏は地上を歩くには適さない

水かきを持つてのひら 長さのそろった指

蓮の花に乗りたがるのは 

すぐさま足を水に浸せるからだろうか

それでもなお

ほとけは身もかろく蓮台から踏み出す気配を見せる

謎めいた指暗号などほどいて 

滑らかな異形の手を差しのべようとする


繰り返しすぎた自己批判に疲れきったとき

その深いまなざしを心に浮かべる

あらゆる世界宗教は この世を終わらせたがるが

日の射さないお堂のほのかな闇に 金色の微光が浮かび上がるとき

ほとけよ 

あなたのやさしい忍耐がわかる

終末という救済

転生という罰

人を救い続けるという監獄にほとけをつないだことが 

人間の何よりの罪だとしても

それさえゆるすあなたの 静かなる結跏趺坐

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