眩しい現実の裏通りにある私のChina

染付の冷たい青と滑らかな硬さ、

絵付された風景のなかの帽子の人物。

きれぎれのChinaの断片は私を迷い込ませる

舞台の長いカーテンの複雑な迷路に。

頑丈な木造建築の内部の薄暗さと、鳥肌が立つほどの涼しさ

タイルを敷いた小さな中庭の水路を流れる水に

濃い緑の柳が影を落とす動物の石像

Qingとでもよびたいようなひんやりした身体的な感覚が

寸の間肌の表面をすり抜ける

戦慄と甘美という、二つの鐘の共鳴を身の奥に起こして。

この奇妙な印象は

幼い日の私が作り上げたものなのだろうか

どくだみが白く咲き群れる湿った裏庭と

かびの匂いの漂う薄暗い家で育った幼い私

狭い廊下や玄関や庭には、

暗い色調の布のなかを行進する象と

お香を立てた蓋つきの小さな陶碗、

白いあじさいの繁みの下の闇がある

梅雨入り前の曇天の朝に

台所の網戸を通して湿った涼しい風が吹きつけるとき

恐ろしさを伴った懐かしさで私の胸はざわめく

どくだみの庭にいまも立ったままの幼い私は

いつか私が帰ってくるのを待っている

そして時折冷たい身体的感覚を送ってくる

ガラスの急須でいれた中国茶の底にひらく花と

幾何学文様を透し彫りにした欄間

隠されたChina

私のなかのQingに、引き戻される

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る