不均衡

心のどこかの扉の脇に

冬瓜が転がっている

寒くて薄暗い朝の台所で

コンソメスープのことを考える いまは作れないけれど

冬瓜は、夏野菜だから仕方なかった


片方のピアスだけ、ずっと探し回っているみたいだ

わかってよ

なんて言わないことが

本当に好きになることだとしても

わたしが世界を押す力と

世界がわたしを押す力が

完璧につりあっていたころに戻りたいよ


心のどこかの扉の脇で

冬瓜が腐っている

ウィンナー、ハム、挽き肉

わからないほど変形させられたせいで、逆にちらつくその原形が

恐ろしいのだ


さみしい秋の山麓に

明治に建てられた洋館があり

わたしがその女主人だとして

自ら誕生会を開いたとしたら、

十一人の客はひとりずつ殺されてほしい

からまつ林の言い伝えどおりに

……犯人はわたし

完全な自殺をしたくて

知り合いのなかのわたしを消すために、

彼らを殺した

探偵は、あなた

わたしのことが好きなあなたの心を引き裂いてやりたくて、

罪を犯した

(魚肉ソーセージの血の味を好む)

ほんとうに殺したかったあなたを残したのは

愛するわたしが目の前で死ぬのを見せつけるため


——そんな前世がほしいほど

あなたとすれちがう理由を求めた。

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