いちじく

ステンドグラスを

幾何学模様にはめこんだ、アラビアランプみたいに

内側から発光する不思議な果実を

あなたの手からうけとった


イヤリング、シャンプー、いちじく

なくしやすく腐りやすいものばかり、わたしにくれるひと

川べりに寝転んで

のぞいた、あなたの眼に揺れていた街灯の数を

忘れることができないのだ

水に映る町、雲の上の城

淡く途切れやすいものばかり

わたしと見ようとするひと


満月に近い月が

あまりにも白くかがやいていて

わたしは

その表面の匂いを知っている気がした

しん、とした雪と氷の匂い

その向こうにゆらめく、オレンジの灯にあこがれて

冷たく透けた、硬い殻に手をあて

溶かそうとしてしまうのをどうしよう

万年雪の冷たさの手に

五月の燕のようにすれちがっては

それでも触れようとしてしまうのを

満月は新月の闇のはじまり

熟れすぎたいちじくの

ずるりと皮のむけた感触をもう

幻のように感じているのに

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