序章2 告白

「好きです。俺と付き合ってください」

 頭を下げて手を差し出した直後のことである。

「無理なんだけど」

 その一言で下げた頭を上げられなかった。

「え?」

「『え?』じゃないわよ。だって、喋ったこともないし、私のタイプじゃない。むしろ嫌いなタイプ。マジキモいんだけど。もう二度と喋りかけてこないで」

A子から返ってきた返事はまさかの拒絶。絶望。

そこまで言うか、と言うくらい酷い追い討ちだ。何よりもその言い方が信じがたいものであった。まさかあんな可愛い顔からそんな毒が吐かれるなんて誰が想像しただろうか。

当たって砕けろという言葉があるが、砕けたら意味がない。この時の俺に時間を戻す力があればすぐにでも告白する前に戻りたい。だが、時間が戻ることはなく俺は酷く傷付いた。

鮮明に覚えていないが、その日、A子が立ち去った後はしばらくその場から動けずショックを受けた。家に帰る時、大泣きしていたことは確かである。家族に泣き顔を見られないように必死だった覚えはある。

最初で最後とも言える勇気の告白はほろ苦い結末で終わった。

それで終わるならまだいい。問題はそこからだ。

 翌日、俺はA子に告白したことが学年で広まったのだ。

 会う人から失恋したことを弄られる。

 当然、情報の発信源はA子からである。俺はクラスで居場所を無くし、しばらく学校を休んだ。現実は予想外な事が起き、時には残酷な結末を生む。小学生で俺は現実の女はロクなものではないと思い知らされた。

 その出来事から俺は恋するのが怖くなってしまった。女というものが分からない。

 何が真実で何が嘘なのか、考えれば考えるほど何も分からない。

 失敗例を聞いてもらった通り、この物語は必ずしも人は見た目通りとは限らないと言うことだ。そんな話。


 常に先入観を持つことが今後の俺の人生に影響を与えた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る