第5話 世界が今、動き出す


◇自宅のリビング



『まもなく、政府の緊急生放送が開始されます。』


 声が響いた後、すぐにテレビをつけていたが、どこのニュース番組も突如頭の中に響く声の話題で持ち切りだった。

 

 急に頭の中に響いた宣言……いや、あの声の内容が事実なら、神託と言うべきか。

 この神託が事実ならば、何かしら政府からの宣言があると思い、リビングのテレビに張り付いていた。


 ネットの反応などを見て、だいたい四十分たった頃。ようやく、政府の生放送が始まる。




 総理がマイクの前に立つ。


『えーそれでは、緊急生放送の方を開始させていただきます。まず結論から申し上げますと、先ほど世界中で起きた声の内容は、事実だと思われます。』


『四日前に突如現れた謎の洞窟や、建物。通称、ダンジョンと我々は呼んでいますが、ダンジョンには未知の危険生物が発生しており、現在発見している物でも四十個所もあり、未発見の物も含めますと日本だけで、推定百個に及ぶと思われます。』


『そして、皆さんも気になっているでしょう。ダンジョンとは何か? いずれ来る厄災とは何か? 何故、突如としてこの様な事が起きるのか? そして、何故声の内容が事実だと言えるのか? その理由を紹介いたします。―どうぞ、お越しくださいませ。』


 総理が言葉を終えると、光の玉が集まり出す。

 光の玉が大きくなると人型になり、画面を直視できないほど眩しく輝く。

 光が晴れると、そこには巫女服を着た美少女がいた……いや、美少女何てモノでは無い。


 腰まである、月明りが照らす夜の様な艶やかな黒髪。全てを優しく照らすような、太陽の輝きを凝縮した琥珀色の瞳。大人の色気をすべて合わせてできた様な薄い桃色の妖艶な唇。巫女服を着ていても分かる、つい視線が引き寄せられる美しい体つき。


 顔も体も、全てが最高の黄金比。美しくも威厳ありし、我らが主神様………我らが主神?


 待て、何故相手が主神だと分かる? そもそも何故、神だと納得している? 魔法の時みたいに、理解させられた?……いや、この感じはもっとこう、根本的な処で分かっていた様な………。


『あー、んん。聞こえていますか?今この放送を見ている我が民よ』


 とてもかわいい感じの声が響く。………とりあえず、放送を聞くか。


『今皆さんは不思議に思っていることでしょう。何故、見たことも無い私を神だ理解しているのか。まあ、それもまとめて答えていきますね! あ、長くなりますので飲み物とお菓子の準備をしといてくださいね!』


 如何やらこの神は、結構おちゃめな感じらしい。


『準備できましたか~? では、話していきますね!』


『まずダンジョンについて説明しますね!』


『ダンジョンとは、世界の歪みを人々にも修正できる様に、神々が歪みを抱えて、自分の存在を変え、表面化させたモノ。簡単に言えば、ダンジョン=神ですね!』


『ダンジョンを攻略すると言う事は、神を攻略する。又は解放する意味を持ちます。神の解放、すなわち歪みの修正。無論、報酬は豪華になります。』


『ダンジョンをクリアした者は報酬として、そのダンジョンに成っていた神を好きにできます。我々神は、その神の好みもありますが基本実績と能力を評価します。そして、神は全員私みたいな美男美女ばっかりです。嫁にしても良し。従者とするも良し。力だけ貰うも良し。仲間にしても良し。』


『何れにしても攻略した時点で最高神の加護が与えられ、不老になります。不死になるかどうかは自分で決めれます。まあダンジョンでは普通に死ぬけどね!』


『次に、厄災とは何か。』


『厄災とは、歪みを修正できなかった、又は歪みを修正しようとしなかった場合に起こる異世界からの侵略。この侵略は異世界人の意識によるモノでは無く、異世界と言う概念そのものが文字通り、この世界と衝突して融合しようとしていることを示します。』


『では、肝心の歪みとはナニか。』


『歪みとは、こちらの理を壊してしまう異世界の理。理をみんなに分かりやすいので言うと、生と死の概念とかかな?』


『そして、問題になってくるのが今回起きる異世界との衝突と融合。即ち、異なる理同士による侵略合戦。実は理にも相性があって、滅茶苦茶相性が良い理同士だったらすぐに適応できたんだけど、今回のはかなり相性が悪くて、異世界に衝突するとこの世界に存在する全てが無になってしまう。』


『そして、歪みの修正とは。』


『歪みの修正は、簡単に言うと人と言う存在を通しての喧嘩の仲裁と予防接種。予め問題ない位の歪みを世界に入れてそれを人に適応させ、適応者に理同士の仲を取り持ってもらう。』


『具合的に例えると、好きな人と付き合ってはみたけど相性が悪くて、喧嘩ばっかで破局寸前に妊娠が分かり、お互いもういい歳で別れる事が出来なくなって、妊娠中に相手の不器用な優しさを知ってイイ感じなった所でお互いの遺伝子を持つ子供が生まれて、お互い「え、私達の子可愛すぎてヤバイ。守ってやらねば……」ってな感じ。』


『この例えで言うと、破局=世界が無になる・妊娠=ダンジョンで歪みに適応し始めた人が出た・妊娠中=適応し始めた人がダンジョン攻略中の時間・お互いの遺伝子を持つ子供が生まれる=ダンジョン制覇をした異なる理同士を完全に適応させた適合者の事を示します。』


『ダンジョン制覇者、つまり適合者が両方の世界に認知されれば、基本世界って人と言う名の子供に弱いから、自動的に理同士の相性が良くなっていくんだよね~。で、世界に認知させる方法が、同じ人が何個もダンジョンを制覇して滅茶苦茶強くなるか、同じ存在…つまり適合者をたくさん出すかの二つあって、簡単なのがたくさん出す方法だね。』


『理同士の相性が良くなることによって、異世界と衝突してもこの世界の存在が残り、逆に異世界と融合することで、異世界の大地やそこにある国、異世界の資源が現れ、人々の暮らしを豊かにする………かもしれない。』


『まあこんなわけで、君達にはダンジョン攻略を積極的にしてもらいたいの。勿論、命の危険を冒して攻略をしてもらうわけだから、最初に言った通り報酬は豪華になってますよ。そして、ダンジョンでは歪みの副産物で、異世界の資源や力、この世界には絶対にない技術などが手に入るよ!』


『私が説明できるのはこんな感じかな~。あとは実際にダンジョンを攻略してダンジョンに成ってた神に聞いてね!……あっ、言い忘れてた。何で突然現れた私が神か分かった理由だけど、この世界に存在するすべてのモノは、魂の部分で神威を理解してるから。ちなみに、神威って言うのは言葉の通り神の威圧。神様が存在しているだけで発生する力の事だよ。』


『じゃあまた何かあったら言うから、ダンジョン攻略頼んだよ! 我が子供たち。』



 そう言った後に、神様は光となって消えていった……。

 いや、急に情報量が多すぎる!


 ダンジョン、異世界、衝突、歪み、神、厄災。


 色々と重要な事が出てきたが……まあ、俺がやることは変わらないな。すぐそこに在るダンジョンを冒険し、楽しむ。


 しかし、神か……いたんだな、本当に。しかもダンジョンに成っているのか。てことは、あのダンジョンも神がいるんだな。どんな神なんだろう?


―さて、一旦この話は置いといて。


 ダンジョンが何か分かった。なぜ攻略しなきゃいけないかも。突然ゲームみたいなスキルや魔法と言った力が手に入ったかも。


 だが、何故あの神は一番……少なくとも俺にとってはだが、重要な事を言っていないんだ?

 何が起きたのかは言った。起きた事に対する対処の方法も言った。


―では、ダンジョン攻略をすればいい?


 何故、突然異世界の理何てモンが出てきた? まず異世界ってなんだ。

 いや、分かるよ? ラノベではよくある話ではある。現実で起こるとは思わなかったけど。


 問題は、この厄災が自然的な天災か、な災害か。……俺的には前者で合ってほしい。

 

 そして期限を言わなかったのは、かなり先の話だからか? それとも何時起こるか分からなかったからか?

 もし後者の場合、何故分からなかったのかも考えないといけない。

 普通に何時か分からなかったのか、それとも、誰かが意図的に分からなくさせているのか……俺が考え過ぎなだけかもしれないな。


 だが、これでダンジョン攻略への意欲もかなり湧いてきた。まあ、最初から最大だったけどな!

 おっと、まだ放送が続いているな。流石に今回ばかりはちゃんと聞かねば。



『えーでは、ここからはダンジョンについて、政府で可決した法や資格について―』





―『ダンジョン攻略冒険法』


 一・ダンジョン攻略をするに当たり、政府が定めた冒険者資格を必ず取らないといけない。資格無くダンジョンに入った場合、懲役二年、又は二百万の罰金。


 二・ダンジョン攻略するに当たり、政府が設立した冒険者協会に所属しなければならない。資格持ちでも、冒険者協会に所属せずダンジョンに入った場合、1と同じ罰並びに一年間政府の監視付きで過ごさなければならない。


 三・ダンジョン攻略するに当たり、ダンジョンで手に入れ、持ち帰ったモノや資源は基本、本人の所有物となるが、必ず冒険者協会に報告、並びに鑑定に出さねければならない。

 虚偽報告や鑑定に出さなかった場合、持ち帰ったモノの重要度又は貴重さによって罰金額が変わり、政府の監視も増える。


 四・ダンジョン攻略するに当たり、ダンジョン内で起こった事は基本自己責任。

 ダンジョン内で冒険者同士の争いで犯罪行為が起きた場合、協会の鎮圧部隊が事態の収束に動く。ただし、民間人に被害が出ない限り冒険者同士の争いに協会は干渉しない。


 五・ダンジョン攻略するに当たり、もし、冒険者が民間人を傷つけた場合、それぞれの法による罰+冒険者資格の剥奪、ダンジョンから持ち帰ったモノ全て押収。押収した中から、被害者に被害総額、又は規模に合わせて与えられる。ただし、冒険者にも正当防衛は適用される。


 六・ダンジョン攻略するに当たり、ダンジョンないで使用する武器や防具は基本協会に置く事。

 持ち運びも可能だが、刃物や槍などの物はカバーや鞘に必ず収納すること。持ち運ぶ場合、必ず協会に申請し、協会からの殺傷武器携帯許可書を常に持ち歩く事。手入れや鍛錬以外でカバーや鞘から抜くことを禁止する。

 もし許可なく持ち運んだり、意味なくカバーや鞘から抜いた場合、罰金百万円+協会による管理講習一か月とその間のダンジョン攻略の禁止。



 とりあえず、重要なとこをまとめるとこんな感じかな。後から更に追加される可能性もあるみたいだ。


 そして、冒険者資格の試験は二ヶ月後に東京で行われるらしい。

 何があるか分からないから、秘匿系又は偽装系のスキルが手に入ったら受けるつもりだ。

 もし、鑑定系のスキル持ちが試験管にいたらステータスがばれて、ここのダンジョンもばれてしまう。まあ、必ずいるだろうな鑑定系のスキル持ちの試験管。

 政府は自衛隊使ってダンジョン調べているだろうし、当然レベルとかも上がっているだろう。一様、世界が掛かっているもんな。



 さて、狙ったスキルが手に入るかどうかは分らんが明日からダンジョンに籠って冒険だ! てことで早いけど、おやすみー。


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