第4話 三十歳になって無いが、魔法が使える様になった。……そういう経験?何のことですかね


◇第一階層、ボスエリア



 ボス戦を終え、報酬とボスドロをちゃちゃっと仕舞った後、第二階層に足を進めた。

 ボスエリアの奥の方に階段が出現しており、そこを下ると一階層よりは大きい洞窟が広がっていた。


〈第二階層に到達しました〉


〈第二階層に到達した事により、フロア転移が解禁されました。〉

〈以降、各階層の入り口と、ボスエリア前の広場にある端末から、登録したフロアに転移できるようになります。〉

〈尚、フロアの登録は自動で行われております〉


 そのアナウンスが聞こえた直後、階段を下りてすぐのエリアでボーっと立っていた俺の横に、地面から端末とやらが出てきた。

 見た目は、よく映画で指紋認証すときに出てくる板?みたいな感じだった。


 試しに、手で触れてみたら―。


〈どのフロアに転移しますか?〉

・〈ダンジョン入口〉

・〈第一階層入口〉

・〈第二階層入口〉


 と、表示されていた。まあこれもゲームではよくある使用だな。


 流石にボス戦は疲れたし、ぼーっとしながら進むか帰るか考えていたところだ。


 しっかし、どうするか。

 区切りもいいし、ここで帰るのが一番なんだろうけど、新しいスキルやら装備やらを敵に向かって試したいんだよなあ。


「くぅん……」

「ん? 如何した、疲れたのか?」

「わん…(うなずく)」


 我が愛犬もどうやら疲れているようだ。家に帰って休みたいと言う雰囲気で目を見つめて来る。くっ、可愛い……。


 そうだな。疲れたし、一回普通に確認だけしてから家に帰って休もうか。


「すまんな、一回だけ試し打ちさせてくれ。」

「ワンっ!」


 返事を返した後、凛狼はその場に伏せる。

 俺は少し離れた位置で、スキルを確認するとしよう。


 肝心のステータスはこんな感じだ。


―――――――――――――――――

<ステータス>

<名前>:「神付従月かみつきじゅうげつ

<称号>:『始まりの冒険者』

<種族>:[人間]

<職業>:[従魔使い:Lv10]

<スキル>

[ユニーク]:≪≫

[所持スキル]

戦闘系:≪連携強化Lv3≫≪付与Lv2≫≪剣術Lv3≫

生産系:≪≫

特殊系:≪鑑定Lv3≫≪従魔術Lv1≫≪従魔管理≫≪空間収納・従魔≫≪従魔促進≫≪小さな運Lv2≫

<魔法>:【水魔法】

――――――――――――――――――


――――――――――――――――――

≪従魔使い≫

:テイマー兼サモナー系の初級職。従魔の扱いが上手くなり、従魔の強化と、魔物のテイムがしやすくなる。

習得スキル

≪従魔術≫≪従魔促進≫


≪従魔術≫

:従魔に関するあらゆるスキルが内包されている。極めれば、最弱の魔物スライムで神を討伐する事ができる様になると言われている。その為、通常のスキルよりレベルが上がりずらい。

使用可能従魔術

Lv1≪テイム≫≪身体強化・従魔≫≪感情感知≫


≪テイム≫

:屈服させたもの、または自分に敵意が無く友好的なものを従魔にする事ができる。


≪従魔促進≫

:従魔の成長スピードが上がる。従魔が思う、理想の自分に成長できる様に成る……かもしれない。

――――――――――――――――――


――――――――――――――――――

【水魔法】

:水に関する魔法適性を得る。魔力に関する事が何となく分かる。魔法はレベルでは無く、使い手の技量によって進化する。

――――――――――――――――――



 職業は従魔使い、魔法は水魔法になった。

 従魔使いの理由としては戦力強化の為だ。テイムで戦力を増やし、強化で個人の力を上げる。

 あと、単純に可愛い従魔が欲しい。


 テイムは敵がいないとできないし、防具のスキル≪召霊右腕・餓鬼≫はよく分からないから置いておこう。

 ≪身体強化・従魔≫と≪感情感知≫は名前から何となく分かるから………となると、やっぱり魔法の確認だな!

 いやー!まさか現実で魔法を使える日が来るとはねぇ~。


 さて、魔法を使う前に少し考えよう。


 魔法の説明には、レベルでは無く使い手の技量と書いてあった。

 これが文字通りの意味ならば、魔法はスキルみたいに勝手に技が増えるのでは無く、自分の手で新たに作りださなければいけない……と、俺は考える。

 実際、レベル表記も無ければ、技も書いてないからな。


 では、一回も魔力と言うものに触れたことも無い人が魔法を発動させるには、如何したらいいか。

 実は、魔法を習得した時に魔力と言うものを僅かながら理解している……いや、理解させられたというべきか。


 急に自分の中にある、温かい何かの力を感じる様になった。それが魔力らしい。

 魔力を動かしながら魔法を使おうとすると、頭の中に呪文と言うべき何かが浮かび、それを詠唱したら魔法が発動する。


 魔法の新しい技を作るには、具体的なイメージが必要になる。イメージをすればするほど完成度は高くなり、高ければ高い程に威力や効果が上がる。


 此処までが、理解させられた魔法と魔力についての基本知識だ。急に、今まで知りえないものを知識として、まるで最初から知っていたかの様に理解している。この感覚は慣れそうにない。


 ま、魔法が使えるようになったしそれは置いとこう。


 いよいよ待ちに待った魔法の方、いきますか!


 イメージ……イメージ……大気中の水分を集めて、その水を操る……流れる様に形を変える、変幻自在の水の塊……。



―【水魔法】想像完了


〈【水魔法・流水球りゅうすいきゅう】を習得しました。〉


―続いて想像拡張を設定。


 変幻自在。魔法の水はすべての変化を可能にする。

 ある時は剣であり盾。ある時は道具であり生物。

 またある時は……っと、此処までが限界か!


―想像の拡張を完了


〈【水魔法・流水球】に魔法が追加されました。〉


――――――――――――――――――

【水魔法・流水球りゅうすいきゅう

:大気中の水分を集めて、変幻自在な水の塊を作り出す。

派生魔法

水球変化みずたまへんげ】(遠距離操作)

:【流水球】で水の塊を作り出したあと、追加詠唱をすることで形を変えるときに追加効果を与える。

流水変化りゅうすいへんげ】(近距離操作)

:【流水球】で水の塊を作り出したあと、追加詠唱をすることで形を変えるときに追加効果を与える。

【■■■■・■■■■■】

――――――――――――――――――


 ……想像以上の奴ができてしまったかもしれない。

 最後のは失敗してしまったやつかな? 撤回する前に完了させてしまったから、こんなバグった感じになのか。


 では、僕がかんがえたさいきょうのみずまほう、いっきまーす!


 魔力を感じながら魔法を使おうと意識すると、頭の中に文字が浮かんでくる。

 なるほど、これが詠唱か。


「【水よ、我が元に集え。形無きモノたちを造形する為に】―【水魔法・流水球りゅうすいきゅう】」


 唱えている間、周りには雨粒ほどの水ができ、胸の前に集まり始める。

 唱え終わると、周りの雨粒はすべて集まっており、目の前にバスケットボール位の丸い水の塊が出来ていた。


「おおー!」


 つい興奮して叫んでしまった。これが魔法か!


 しかし、魔力三割でバスケットボール位の大きさか。想定しているこの魔法の本領を発揮するには、全然魔力が足りないな。


 次、派生魔法が上手くいくかどうかの確認だ。


「【我が元に集いし水は変幻自在。今求めし変化は敵を貫く小さき弾丸】―【水球変化みずたまへんげ水流弾すいりゅうだん】」


 水の塊が散らばって、狙撃銃の弾みたいな形となり、パアンッっと水が破裂する様な音と共に弾丸が放たれる。

 計十五発の弾丸が、ダンジョンの壁を削る。


 ふむ、結構威力があるな。三割の魔力で十五発。一割で五発か。

 

 しかし、小さき弾丸が狙撃銃の弾になるとはな。結構大きい感じがするが、貫くと言う詠唱と【水球変化みずたまへんげ】が遠距離用だったというのが関係しているのか? それとも、昨日見た映画に出てくるスナイパーがカッコよかったなって思いながら弾丸のイメージをしてしまったからか?……俺的には後者の方だと思う。雑念が入っちまったか。


 まあ別にこれと言った支障は無いし、成功としておこう。


 もう一度、今度は近距離用の奴を試してみよう。


「【水よ、我が元に集え。形無きモノたちを造形する為に】―【水魔法・流水球りゅうすいきゅう】」


 ここまでは先ほどと同じ。こっから、近距離用の何かをイメージしながら唱える。


「【我が元に集いし水は変幻自在。今求めし変化は敵を刺し薙ぎ払う長き槍】―【流水変化りゅうすいへんげ水連槍すいれんそう】」


 水の塊が形を変える。細長く、先に短剣程の刃が付いているシンプルな水の槍。

 長さは大体160センチ位かな? 重さは無いに等しい。水だしな。


 両方とも変化に異常はなしっと……よし、想像した通りの魔法に成ってくれた。

 これがあれば、遠距離攻撃が可能になり、近距離戦闘においても手数が増える。


 我ながら天才過ぎる! その場でこの様な魔法を考えつくなんて! ああ、自分の才能が怖い!


 まあ、デメリットが無い訳でもないんだよねー。

 先ず、変化させるのに自分位の大きさで魔力消費は一割。そこに、変化させたあとの造形維持に常時魔力を消費する。

 感覚的に、この大きさで五分一割ってところかな。

 なーんか、急に魔力に関しての感覚も良くなったんだよな。理解させられたのは知識だけのはずなのに。困ってないし、何ならありがたいからいいけどね!


 疲れたし、とりあえずここまでにしときますか。


―ダンジョン第一階層、フロアボスクリア。


 ≪空間収納・従魔≫で俺も一緒に過ごせることが分かったから、明日からはダンジョンに籠って攻略だ!





『全人類に通達する。ダンジョンを攻略せよ。』


『人類は此処まで、様々な事を神に守られてきた。』


『今度は人類の番だ。ダンジョンを攻略し、来る厄災に備えよ。』


『このダンジョンは、我々が与えし、進化の為の試練である。』


『厄災などと言われても、殆どがダンジョンを攻略しようとは思わぬだろう。欲深い人類の事だ。タダでは動かぬだろう。無論、報酬は用意してある。』


『ダンジョン完全攻略者には、不老不死の祝福を与えよう。』


『他にも、ダンジョンに入れば、富、名声、力、全てが手に入るだろう。』


『故に人類よ、ダンジョンを攻略せよ。試練を突破して、望むが儘に願いを叶えよ。』


『これが、神々が与える最後の試練だ。』





 家で休んでいるなか急に頭の中に声が響いたと思ったら、思った以上に深い事情の説明だった。



―――――――――――――――――

<ステータス>

<名前>:「神付従月かみつきじゅうげつ

<称号>:『始まりの冒険者』

<種族>:[人間]

<職業>:[従魔使い:Lv10]

<スキル>

[ユニーク]:≪≫

[所持スキル]

戦闘系:≪連携強化Lv3≫≪付与Lv2≫≪剣術Lv3≫

生産系:≪≫

特殊系:≪鑑定Lv3≫≪従魔術Lv1≫≪従魔管理≫≪空間収納・従魔≫≪従魔促進≫≪小さな運Lv2≫

<魔法>:【水魔法】

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