第4話 事件

「羽田」



放課後、バイト先に向かおうとして教室を出ようとした、その時、誰かが呼び止めた。



「滝村君、何?」

「あれからどう?大丈夫そう?」

「あ、うん…」

「それなら良いけど…」




実は、あの日、最近の2つの事件(こと)を滝村君に話をした。


彼に尋ねられたからだ。


ただ、私の詳しい家庭環境の事は一切話をしていない。


正直、自分の事はまだ知られたくないからだ。


だけど、いずれにせよバレるのは時間の問題のような気がするけど……



「それじゃ!バイト行って来ま〜す!」




グイッと腕を掴まれ背後から抱きしめられた。



ドキーッ



「えっ!?ちょ、ちょっと…滝…」

「何かあったら俺に言え!」




ドキン


私の言葉を遮るように耳元で聞こえる彼の声に胸の奥が大きく跳ね体が熱くなった。


今までにない出来事に私の胸はざわつく。



バッと離れる滝村君。



「さっ!バイト行きな!」

「えっ!あ、うん…」




私達は向き合う事なく、そのまま別れた。


私の胸はしばらくドキドキと加速していた。




その日のバイト終了後。




「弥来」



ビクッ


名前を呼ばれ視線の先には義理の父親の姿。




「な、何しに来たの?」

「弥来、一緒に暮らさないか?」

「えっ…?…何…?急に…」

「不便していないか?」

「大丈夫だし!つーか、あんたになんかお世話になる気は更々ないから!」



私は走り去り始める。



グイッと腕を掴まれ、すぐに捕まってしまった。




「や、やだ!離してっ!」



口を塞がれ私を強制的に車に乗せられた。



《嘘…!?車…!?》



私は手を噛み走り去り身を隠す場所を探すと身を潜めた。


まさかの車は予想つかなかった。




私は無意識に助けを求めるように滝村君に連絡をした。


前回を機に連絡先を交換したのだ。




「もしもし?羽田?どうか…」

「お願い…来て…」

「えっ?」

「アイツが来て車に乗せようとして…」



「弥来、何処にいるんだ?さあ、家に帰ろう」



奴は探している様子だ。




「お前、今、何処にいるんだ?場所を言え!」

「場所は…」



暗くて良く分からない。


無我夢中で逃げて来たからだ。


近くの公園に逃げて来たのは分かるけど、名前までは確認しなった。


私は公園とだけ伝え、メールを送る事にした。




しばらくして―――――




「弥来、こんな所にいたのか?」




ビクッ


見付かってしまった。


油断していた。




「さあ、帰ろう!」




グイッと私の手を掴み、連れて行き始める。




「や、やだ!離してっ!つーか、何処に帰るつもりでいるわけ?」

「もちろん、弥来の所に決まっているじゃないか!?」

「えっ?私の所?」

「今、住んでいる所だよ。俺の住んでいた所でもあるんだから」



「………………」




その時だ。




「その手、離して頂けないですか?」




ビクッ


振り返る視線の先には



ドキッ



「滝村君…」




掴まれた腕を引き離すように間に入ってくる滝村君。





「な、何だね!?君は!」

「彼女のクラスメイトです!余り彼女を困らせないでくれませんか?」

「君には関係ないだろ!?」

「そうかもしれませんが、彼女はかなり迷惑がっていると思いますけど?」


「そうなのか?親子じゃないか!?」

「あんたとは血の繋がりがないんだから父親なんかじゃないっ!第一、あんたは私に…」



「………………」



「…羽田?」


「と、とにかく私はあんたとなんか帰らない!あんたと帰る位なら彼の所にでも行くから!」




私は、滝村君の手を掴み去り始める。





「弥来っ!待つんだ!」


「私に構わないで!どういう理由で、あんたが来ているか分からないけど、正直、これ以上関わって欲しくないから」


「そうか…じゃあ…仕方がないな」


「えっ…?」


「弥来…俺はな、お前を娘として今まで育ててきたんだからな!一人で育って来たような言い方をするな!」


「逆ギレされても困るんだけど!」


「気付けば娘として思えなくてなってな…」


「…つまり…それって…恋愛感情があるって事かよ…」



滝村君が言った。



「…えっ…?」



そして、私の前に立ち塞がるようにすると、私を背後に隠すようにした。



「羽田…気を付けろ…」


「えっ…?」



私に聞こえる位の声で言った。



「…俺から離れんな…」

「…滝村君…?」

「ちょっと本気出さなきゃヤベーかも!?」

「えっ…!?」


「弥来、俺と一緒に住もう!」

「えっ…?な、何言って…私は…」

「弥来」



近付く始める義父。



「なあ、おっさん。大騒動を起こしたくねーんだけど?素直に帰った方が良いんじゃねーの?」




ドキン


学校では普段見れない、滝村君の姿に胸が大きく跳ねた。



《えっ…!?嘘……!?》



「俺が本気になる前に素直に去れよ!」



「………………」



「何ぃっ!?第3者であり、家族でも何でもねぇお前に指し図されたくねぇっ!娘を渡せ!邪魔なんだよ!」



「つまり…それが…おっさんの本性…。それじゃ、彼女も怖がるよな?家族?ふざけんな!血の繋がりがないなら家族とは言えないんじゃねーの?それに…恋愛感情なんてあるなら尚更、あんたに近付けるのは危険過ぎんだよ!」



「……………」



「2人の間に何があったかは知らねーけど…まあ…大体の予測はつくけどな!」


「クソ子供(ガキ)が!」





そう言うと、こっちに向かって襲い掛かってきた。





滝村君は、私をかばうようにしながら奴から交わす。



ドサッと地面に転がる人影。


滝村君は、相手を押さえつけた。




「野郎っ!退けっ!」

「簡単に退くわけねーだろ?俺、良い子じゃねーから」



「………………」



「羽田、コイツ、どうする?」


「えっ?」


「警察連れてく?ストーカーされてます!って。義理の父親とはいえ、うまく言えば犯罪行為だけど?」


「…それは…」





その結果―――


申し訳ないと思う中、私は警察にお世話になってもらう事にした。


一緒にいると確かに危険過ぎるし、更に酷い目に遭うのが目に見えていた。


恋愛感情があるなら尚更だ。


ただでさえ、過去にヤバイ事があったのにハッキリ覚えていないのが尚更悔しい。





その日の帰り。




「大丈夫か?」


「えっ…?」


「家に来る?つーか、その方が良いんじゃねーの?一人じゃ不安だろう?」


「…それは…。で、でも大丈夫だから!ありがとう」




「………………」




「なあ」


「何?」




グイッと抱き寄せられたかと思うと、背後から抱きしめられた。





ドキーッと胸が大きく跳ねる中、




「無理すんなよ!」




ドキン



「学校のお前、無理してるだろう?愛想振りまいて元気に明るく過ごして…でも…本当は…自分を隠してる…俺の前では、ありのままの自分見せて良いから。つーか、見せろよ!」



「………………」



抱きしめた体を離し向き合う私達。



両手で両頬を包み込むようにすると優しい眼差しを見せる。



ドキン



「俺じゃ、お前の力になんねーのか?」

「…滝村…君…」



胸がドキドキ加速する中




「いや…えっと…」



私は滝村君を押し退け背を向けた。




「お前、案外、純なんだな?」


「そ、それは…毎日バイトで多忙だし、こういうのって程遠いし」


「確かにお前忙しそうだもんな〜。体休めてんの?」


「うん!大丈夫!休めてるよ」


「それなら良いけど…お前無理しそうだしな。つーか、今日は家に来い。時間も時間だし危険過ぎる」




私は、滝村君の所に行く事にした。






気付けば


一番本当の自分を


出せていた相手かもしれない



だけど……



今はまだ



自分の想いに


気づかなかった














































































































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