第2話 弥来の人生
「弥来」
ビクッ
義理の父親が、バイト先に突然現れた。
「な、何?」
親が再婚してから、お互いの浮気が発覚し、その後、2人は結局離婚。
2人は住んでいた部屋を出て行き、愛する人と住む事となり私だけそのまま通学とバイトの行き来のみではあるものの、その部屋に寝に帰っているだけの状況なのだ。
いわゆる、私は一人暮らししている。
母親は私の心配を考え、部屋を出入りしてくれているんだけど……。
突然義父の訪問には驚きを隠せなかった。
「ちょっと時間良いか?」
「………………」
私は、抵抗があった。
突然に現れた理由が分からない。
「用事なら、今ここで済ませて!」
「それが…そういう訳にはいかなくてな」
「…そっか…分かった…ごめん…付き合え……」
グイッと手を掴まれ歩き出す。
「や、やだ!ちょっと離してっ!今更、何?つーか、突然何なの?」
「少しくらいは良いだろう?」
「良くない!第一、あんたといるとロクな事ないから!何考えてるか分からないよ!何されるか分かんないし!」
「親に向かって…」
「あんたなんか義理の父親だし!親なんて思った事ないから!」
「本当、お前って奴はムカつく小娘だな?」
「ムカつかれて結構!さようなら!」
私は逃げようとしたが、すぐに掴まった。
「や、やだ!」
次の瞬間。
もう片方の手を誰かが背後から掴んだ。
ビクッ
「その手離して頂きますか?」
「な、何だ?俺は娘に用事があるんだ!家庭の事に第3者の君には関係…」
「第3者とはいえ嫌がっている娘さんを無理矢理連れて行くのはどうかと思いますけど?それとも、あなたは日本語通じないんですか?」
「なっ…!失礼な奴だな!君は一体誰なんだ!関係のない奴は口出しするんじゃない!」
「分かりました。じゃあ口出しはしません。羽田、ちょっとごめん!」
「えっ?」
グイッと一瞬私の手を引き、義理の父親を押し退けた。
「何するんだ!」
「えっ?いや、口出しするなってあなたがおっしゃったんで約束守っただけですよ!ちょっと手を加えただけですよ!俺、間違ってますか?」
「チッ!弥来、また来るからな!」
そう言うと義理の父親は帰って行った。
「大丈夫?」
「うん…」
「羽田ん所、複雑な家庭環境なんだ」
「えっ!?」
「違うの?」
「…違うよ。仲が悪いだけ」
「義理の父親なんでしょう?」
「それはそうだけど。でも、滝村君には関係ないじゃん!」
「まーね」
「それじゃ」
私達は別れ始める。
「送ろうか?」
「平気!あんたが迷っちゃうよ。田舎だから。私は田舎育ちの女だから、どうって事ないよ」
私は走り去った。
「…つーか…アイツの家庭環境って…マジ複雑なんだろうな…学校のアイツからは想像出来ない闇ありそうなんだけど…」
俺は、まだ彼女の事を良く知らない。
だけど、彼女はきっとみんなが知らない何かを心に秘めていると思った。
そんな俺も、まだ本性は出していない。
俺の家庭も色々ある環境だ。
彼女と俺は同じ境遇のような気がした。
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