君の力になれたら
ハル
第1話 転校生
「弥来(みく)」
「何?お義父(とう)さん」
「弥来は、本当に可愛いな」
「えっ?」
ドサッ
押し倒される。
「や、やだっ!な、何?は、離してっ!」
「楽しい事しようか?」
「や、いやあああっ!」
この後の事は、何も覚えていない。
目を覚ました時は自分のベッドにいた。
これは中学2年の時だった。
両親が離婚し、中学に入る前、母親が再婚した。
母親は、その再婚相手と幸せそうにしている中、母親がいない間、私に対して急に義理の父親の過剰なスキンシップが増え始めたのだ。
この事件は、今だに鮮明に思い出され夢でいつも見るのだ。
だけど、この後は本当に覚えてなくて、この事件の瞬間の記憶だけ全く覚えていない。
この事件以来、義理の父親は外に他に若い女性をつくり、母親がいない間、何度も部屋に連れ込んでいるのを見掛けた。
そんな母親も、しばらくして他の若い男性と一緒にいる所を、度々見掛けている。
あれから数年の年月が流れ、私は高校生。
申し遅れました。
私の名前は、羽田 弥来(はねだ みく)。16歳。高校2年生。
学校終わってバイトに行って、春も夏も冬も休みの期間はバイト尽くしの日々。
とにかく、ここを出たい一心で今を至っている。
そんな家庭環境なんて誰も知らない私の存在は、学校でも、クラスでも悟られないように元気に過ごしているのだ。
そう――――
誰にもバレないように――――
「弥来、今日もバイト?」
「うん」
「もう、たまには息抜きして遊びに付き合ってよ〜」
「ごめん、ごめん。じゃあ、早目に休み貰っておかなきゃだね?予定、立てちゃう?いつにする?」
「じゃあ、予約するから日程決まったら連絡する」
「了解!連絡待ってるね♪」
「うん!」
友達はいない訳じゃない。
クラスや学校に幅広くいる方だと思う。
そんなある日の新学期。
こんな地元の集まりと変わらない田舎町のクラスに転入生が来た。
珍しい来客だ。
そんな事などとは知らず
「転入生を紹介する」
ガラッ
「羽田 弥来!只今、寝坊して遅刻してきましたぁ〜」
「コラッ!堂々と遅刻しておいて言うな!」
「すみませ〜ん。おはようございま〜す!」
「おはようございます。全く。後、制服の上着のボタンはキチンとはめて着なさい。女の子なんだから」
「仕方ないじゃん!遅刻してバタバタだったんだし。それより珍しい。こんな田舎に転入生!?」
「こら、羽田、言葉に気を付けろ!」
「えっ?だってウチの高校って地元の田舎の集まりと変わらなくない?悪い意味じゃなくて良い意味で。私は好きだよ。みんな優しいし良い奴ばっかだし」
私は話をしながらも自分の席に移動する。
「まあ、そうだが…悪い滝村、自己紹介してくれ」
「は、はい…えっと…滝村 蓮(たきむら れん)です。宜しくお願いします」
「滝村は、都会から来た都会っ子だ。田舎の環境は全く慣れていないから、みんな色々と教えてやってくれ」
「はいはい、じゃあ、私達は都会の事分からないから色々教えて♪」
私は片手をあげて話す。
「あ、うん…」
「そういう話は後でじっくりしてくれ」
「いや、別に今とは言ってないから」と、私。
「クスクス」
クラスに笑いが起こる。
「お前は、本当あー言えば、こー言うで…。そんな羽田は、転入生、滝村の校内案内役頼んだぞ」
「うわぁ〜出たよ!遅刻した罰のありきたりな理由の校内案内」
「羽田〜、残念だったなぁ〜。休み時間潰れてんじゃん!」
クラスの男子生徒が茶化す。
「うっさいな!」
「コラッ!二人とも…すまないな。こんな感じではあるがみんな良い奴ばかりだから」
「はい」
そして、昼休み時間。
私は、転入生の彼・滝村 蓮君を連れて校内を案内する。
地元の高校の為、顔見知りの沢山いる学校だ。
通る度に、声をかけられる。
「凄いね」
「えっ?」
「本当、地元の高校だから仲良いんだね」
「仲良いのもあるし顔見知りがいるだけだよ。だけど、田舎だから変な噂とか、ありもしない噂は一気に広まって大変だから」
「そうなんだ」
「うん」
田舎の面倒な所。
だけど、協力的だから地元の絆は本当に強いのが自慢だ。
「一通り案内は終わったから分からない事あったら私や他の子に聞いて。滅多に来ない来客だからみんな良くしてくれるからどんどん聞いて大丈夫だよ」
「うん…分かった」
それから数か月が過ぎ、滝村君はクラスにも学校にも慣れ、みんなと仲良く過ごしていた。
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