第90話 グリフィント皇都
セレンの街を出ると、いよいよ皇都まではあと少しと言ったところである。
早ければ今日の夜には皇都へ入れるのではないだろうか。
「今日の目標は皇都としますが、トラブルがあればその前の街までとします」
「わかりました」
今日中に皇都へ入るというプランは、あくまでも順調に進んだ場合だ。
トラブルに巻き込まれた場合は皇都までは辿り着くことが出来ないだろう。
このところ、暗殺されかけたり魔人と戦ったりと予期せぬトラブルが続いているので、今日は何事もなく進みたい。
そんなヴィムの願いが通じたのか、夕方まで何も起こることなく順調に進んで行った。
途中、魔獣の出現などはあったが、所詮はヴィムたちの敵では無かったし、ヴィムが殺気を送ると大抵の魔獣は引っ込んでいく。
「今日は平和でしたね」
「そうですね。まあ、これが普通なんでしょうけど」
カミルさんが苦笑いを浮かべながら言った。
ヴィムは何かとトラブルを引き寄せる体質なのかもしれない。
馬車の窓から見える景色が茜色に染まり始めた頃、皇都が見えてくる。
「あれが皇都です。ようやく着きましたね」
長い旅もこれでようやく目的地に到着したというわけである。
ヴィムたちは皇都に入るための検問所へと向かった。
検問を待つ列に並び、しばらく待っているとヴィムたちの順番がやってくる。
「こちらは、レオリア王国王家の家紋とお見受けします。失礼ながら身分証のご提示をお願いできますか?」
検問所の騎士が告げる。
「レオリア王国の大使として来たヴィム・アーベルと申します」
ヴィムはSランクを示す冒険者カードとレオリア国王直筆のサインが入った証明書を提示する。
「お疲れ様でした。陛下がお待ちになられていますので、宮殿の方へどうぞ」
「ありがとうございます」
皇都に入ると雰囲気は一気に変化する。
異国の地に来たのだなと実感する雰囲気である。
見知らぬ土地に来ると空気までもが変化して感じるのは俺だけだろうか。
皇都の中を馬車は進み、王宮へと到着する。
そこでもチェックを受けて王宮の中へと入る。
「長旅お疲れ様でございました。陛下がお待ちになられていますので、どうぞこちらへ」
従者が粛々と頭を下げて言った。
そして、そのまま謁見の間へと通された。
豪華に装飾された謁見の間の扉が開き、高級感のある絨毯の上を歩く。
ヴィムの両脇にはハナとミサ、後ろにはカミル団長が居る。
指定の位置までいき、ヴィムたちは片膝を付いて頭を下げる。
「面を上げよ」
謁見の間に陛下の渋い声が響き渡る。
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