第91話 会談

 謁見の間には陛下の他にもグリフィントの重鎮と思われる面々が並んでいる。


「この度は遠方の地よりよくぞ参られた。早速で悪いのだが、魔人を倒したというのは本当か?」


 どうやら、既に陛下の耳にも魔人が現れた事とその魔人がヴィムたちの手によって討伐されたことが伝わっているらしい。


「はい、その通りです。私が魔人と魔獣の群れを討伐しました」

「そなたの名は?」

「申し遅れました。ヴィム・アーベルと申します」


 ヴィムが言うと一瞬で謁見の間の空気が変わり、ざわめきが上がる。


「そなたが、深淵の魔術師殿か」

「はい、レオリア国王陛下より、深淵の魔術師の名を頂いております」

「礼を言おう。あのまま魔人どもが放置されていたら、我が国の戦力では甚大な被害を被っていただろう」


 陛下は豪華に装飾された椅子から立ち上がると、ヴィムたちに頭を下げた。


「頭をお上げください。私はただ見過ごせなかっただけですので」

「それだけの力があってなお謙虚とは、若いのに人間が出来ているのだな」


 陛下は頭を上げると、再び椅子に腰を下ろす。


「長旅疲れただろう。部屋を用意してあるゆっくり休むといい。同盟の件、前向きに考えようじゃないか」


 陛下との謁見が終わると、皇国の従者によって来客用の部屋へと通される。


「こちらが、ヴィム様のお部屋、隣がハナ様、ミサ様のお部屋になります。騎士団の方はこちらをお使いください。どうぞごゆるりと」


 従者が粛々と頭を下げ、その場を離れて行った。


 来客用のその部屋はとても豪華な作りとなっている。

天蓋付きのソファーにふかふかなソファー、床には綺麗な絨毯が敷かれている。


「陛下たちの会談は明日か……」


 グリフィント陛下とレオリア国王との会談はこの王城内で、明日取り行われることが決定した。

ヴィムは魔力を完全に回復させるべく、ベッドに横になった。



 ♢



 翌朝、朝食を取った後、ヴィムたち一向は応接間へと通される。


「ヴィム殿、頼めるか」


 グリフィント陛下には、ヴィムの空間魔法でレオリア王都とグリフィント皇都を繋げるという事を伝えてある。


「わかりました」


 ヴィムは静かに目を閉じる。

そして、レオリアの王宮内とここを繋げるイメージで空間魔法を展開する。


 ヴィムの魔法は徐々に広がって行き、やがて大人一人が通れるまでのものに拡大した。

その魔法の中をレオリア国王が通って来た。


「これは、凄いな」


 そんな感動の声をレオリア国王が上げる。

グリフィント陛下もまた、驚きの表情を浮かべていた。


「まさか、空間魔法にこんな使い方があるなんて……」


 本来の空間魔法の使い方とはだいぶ違うものなので驚くのも無理はない。


「初めましてグリフィント王、お招き感謝する」

「こちらこそ、よろしくお願いします」


 グリフィント陛下とレオリア国王が握手を交わす。

その様子を見届けて、ヴィムたちは応接間を後にするのであった。

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