第51話 スライム討伐

 森に入ってしばらく歩いていると、調査の通りにスライムと魔獣が出現した。


「魔獣の方は我々で。ヴィム様たちはスライムの方をお願いします!」

「了解」


 カミル騎士団長はスライムでは無い魔獣を剣で切り裂きながら言った。

ハナも魔獣に対抗して剣を振るっている。


『燃えろ』


 ヴィムがそう言うと、スライムが炎に包まれた。

数十体いたスライムは一気に片付いてしまった。


「あの火力の魔法を無詠唱で……」


 新人の魔導士は驚いた表情を浮かべていた。


「こんなんで驚いていたらここから驚きっぱなしですよ」


 剣に付いた魔獣の血を落としながらカミル騎士団長は言う。


「何しろあの方の魔力操作は桁違いですから」


 その通り。

ヴィムは並列して12個の魔法を同時に展開することができる。

これがどれくらい常識から外れているかというと、宮廷魔導士団の筆頭でも同時に展開できるのは3つが限界だ。

ヴィムはその4倍の魔力操作を可能としている。


「さて、次に行きましょう。こっちに魔獣の気配を感じます」


 スライムと魔獣が片付くと、ヴィムは索敵魔法に引っかかったスライムの方に向かおうとしていた。

他の部隊も出現したスライムと格闘している様子だった。


 この強さのスライムなら問題なく倒せるだろう。

魔獣の方も騎士団に任せておけば今の所は問題ない。


 ヴィムたちの部隊はさらに森の奥に進んで行く。


「魔獣は任せます」


 出たきたスライムに向かってヴィムはひたすら魔法をぶっ放して行く。

かなりの魔法を使用したが、まだ余力はある。


「こっちは終わったぞ」

「こちらも、もうすぐに終わります!」


 カミル騎士団長とハナはこの短時間にもかかわらず上手く連携を取っていた。

剣を振るって魔獣の首を切り落とす。


「お見事お見事」

「ヴィム様も全くお疲れの様子が見えませんね」

「そうですね。魔力ならまだ8割ほど残っていますかね」


 こうしている間にも魔力は回復している。

おそらく、あと30分もしたら完全に回復することだろう。


「流石です」

「ん? これは」


 その時、ヴィムの索敵魔法に通常のスライムや魔獣とは違う魔力生命体の反応が引っかかった。


「ヴィム様、どうかされましたか?」

「いや、大きな魔獣の気配を感じた。近くの部隊を集めてくれ」

「分かりました!」


 ヴィムの指示で周辺にいた他の部隊が招集された。

その中には魔導士団筆頭代理も存在した。


「今、ヴィムさんが大きな魔獣の気配を感じ取った。そちらに向かうので皆気を引き締めて警戒を怠るな!」


 カミル騎士団長が皆に通る声で指示を出した。


「カミルさん行きましょう」

「了解です」


 ヴィムとカミル騎士団長を先頭に警戒しながら進んで行く。


「この先です」


 そこは森の中でも少し開けた場所だった。


「これは……」


 カミル騎士団長が思わず声を上げた。

そこには、ヴィムの身長をはるかに超えるスライムの姿と、その周りに大量の魔獣の姿があった。


「大量にスライムが出現したのはおそらくこいつが原因でしょう」


 ヴィムはこの巨大スライムがこの一件の元凶だと考えた。


 スライムは分裂して数を増やして行く。

おそらく、このスライムから大量に分裂したのだろう。

その証拠に巨大スライムの周辺のマナが異常に高かった。


 分裂して数を増やすために必要なマナをここに集めているのだろう。


「久しぶりに本気が出せそうですね」


 ヴィムは少し広角を上げて口にした。

そして、一歩前へと出る。


「ヴィム様、何をするおつもりで?」


 後ろからカミル騎士団長の声がする。


「下がっていてください。巻き込まれますよ」


 ヴィムが落ち着いた声で言った。

その一言で、騎士団や魔導士団が少し下がった。


『インフェルノ』


 ドスの効いた声でヴィムは声に出した。

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