第50話 ラーディアの森

 翌日、ヴィムはいつもよりだいぶ早い時間に起き出した。

窓からは朝の光が差し込み、澄んだ空気が流れ込んでくる。


 身支度を済ませると、ヴィムは部屋を出た。


「おはようございます」


 宿を出ると、そこには騎士団と魔導士団が集まっていた。

ハナも準備を整えて待っていたようだ。


「おはようございます。ヴィム様」

「すみません。遅くなりました」

「いえ、時間通りですので、お気になさらず」


 相変わらずイケメンなカミル騎士団長は笑みを浮かべながら言った。


「では、行きましょうか」


 今回の討伐地である森は、ラーディアの街からすぐ近くの森である。

この辺の住民からはラーディアの森と言われている。


「はい、行きましょう」


 ヴィムたちは馬車に乗り込んだ。

森の近くまでは馬車で移動するようである。


「ハナ、今回は無理するなよ。スライムは俺に任せておけ」

「分かりました。すみません。お役に立てず」


 ハナは少し肩を落としていた。

今回の相手は物理攻撃が通じないスライムである。

物理攻撃を主とするハナとは相性が悪い。


「気にするな。何事も適材適所だ。お前には何度も助けられてきた。ハナのことは俺が守るよ」


 そう言って、ヴィムはハナの頭を軽く撫でてやった。


「ヴィム様……ありがとうございます」


 ハナは目をうるうるさせていた。

その様子を見ていたカミル騎士団長はニヤニヤしている。


「いやあ、お二人の信頼関係は素晴らしいですね。私の部下にも見せてやりたいですよ」


 確かに、短い時間だがハナと色んな場面を共にすることで自然と信頼関係が築いてこれている。


「できる人間が出来ることをやる。それでいいと思うんですよ」


 苦手なことは得意な人間に任せたらいい。

その代わり、得意な分野に関してはその技術を磨いて行く。


「では、通常の魔物は私に任せてください! ヴィム様の背中は私が守ります」

「頼りにしてるよ。相棒」


 ヴィムはハナの肩を軽く叩いた。


「到着しました!!」


 数十分して馬車が停車した。

どうやら、馬車が入れるのはここまでらしい。

ここからは徒歩で行くしかないだろう。


 馬車から降りると、魔導士団と騎士団が集まっていた。


「これより、部隊の編成に入る。指示通りに動いてくれ」


 カミル騎士団長の指示により、魔導士3人騎士2人の部隊が編成された。

ヴィムの部隊には、ハナと騎士団長が居る。


「あの、俺の部隊だけ戦力過多では?」

「心配ない。そのために人数は減らしている」


 他の部隊が5人なのに対して、ヴィムの居る部隊は4人。

魔導士団から新人が入れられている。

それにしても、戦力過多だとは思うのだが。


 ヴィムの魔術は規格外だし、ハナの戦闘スキルはその辺の衛兵や騎士よりは上だ。

騎士団長はSランク冒険者と同等な力が保証されている。


 新人の魔導士は恐縮してしまっている。


「まあ、気楽にやってくれ。俺たちがやられるようなことはまずないだろう」


 ヴィムは新人の魔導士に声をかけた。


「あ、ありがとうございます!!」


 新人魔導士は姿勢を正して言った。


「さて、行きますか」

「はい!」


 ヴィムたちの部隊が先頭に立って森に足を踏み入れた。

 

 

 

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