第13話 深淵の魔術師
気づけば朝になった。
どうやら、そのまま寝続けてしまったようである。
「ヴィム様、おはようございます」
昨日の執事さんが部屋にやって来て、扉をノックした。
その声でヴィムは目を覚ました。
「おはようございます」
「朝から申し訳ございません。冒険者資格の授与の準備が整いましたので、お迎えに参りました」
「わ、分かりました」
冒険者資格の授与など、簡単な手続きにわざわざ迎えに来てくれるとは凄い待遇である。
ヴィムは執事さんについて行く。
到着したのは謁見の間であった。
「あの、なぜ謁見の間なのでしょうか?」
「今回は少々、異例のことですのでこうなりました。謁見の方法はわかりますか?」
「あ、それは大丈夫だと思います」
謁見は帝国でも何度かしたことがあったので、多分大丈夫だろう。
「では、いってらっしゃいませ」
執事さんは綺麗に一礼した。
そして、扉の両脇に居たメイドが謁見の間の扉を開けてくれる。
ヴィムは謁見の間の中央を進んで目印の所で立ち止まり、片膝を付いた。
「表を上げよ」
陛下の言葉でヴィムは顔を上げた。
両脇には貴族のような人たちの姿もあった。
急遽の招集だったのだろう。
そこまで多くはないが、身なりからなんとなく分かった。
「ヴィム・アーベル、今回の功績を称え、Sランク冒険者の資格と深淵の魔術師の二つ名を与える。これは、レオリア王国国王としての宣言である」
陛下はキッパリと言い切った後、ヴィムにだけわかるようにニヤッと笑った。
最初からただ単に冒険者資格を与えるつもりは無かったのだろう。
周囲からはざわめきの声が上がった。
それはそうだろう。
Sランク冒険者など、国にも5人と居ない冒険者の頂点である。
通常冒険者資格は、E、D、C、B、A、Sと上がって行くのだ。
それを一気にすっ飛ばすとは前代未聞のことではある。
「つ、謹んで拝命致します」
こんな状況で断られるわけがないだろう。
ヴィムにはそんな勇者的な行動はできなかった。
「例のものを」
「はっ」
陛下の後ろに控えていた身なりのいい男性が陛下にカードのようなものを手渡した。
「今後の活躍を期待しているからな」
「ありがとうございます」
ヴィムは陛下から冒険者カードを受け取った。
そこには、ヴィムの名前と所属国家、Sランクの称号と深淵の魔術師という二つ名が書かれていた。
Sランクの冒険者になると、国王から二つ名がもらえる決まりとなっている。
ヴィムの場合は、迷宮の最深部まで攻略していることも伝わっているので、深淵の魔術師という二つ名が与えられたのである。
ヴィムは冒険者カードを受け取ると、懐に仕舞った。
こうして、謁見は終了した。
「陛下がお待ちになっています」
謁見の間を出ると執事さんに言われた。
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