第14話 陛下の策略

 ヴィムは執事さんに連れられて、応接間へと通された。

そこには、陛下とエリン王女が座っていた。


「Sランク冒険者就任おめでとう」

「おめでとうございます!!」


 二人は微笑みを浮かべながら言った。


「どういうことですか? いきなりSランクだなんて」

「君は冒険者資格が欲しいと言ったが、ランクは言わなかっただろう」


 確かに、その通りではあるが、まさかいきなりSランクにするとは思わないだろう。


「いいんですか? ろくに審査もしないでSランクに任命なんかして」

「君は断絶結界が使えるそうだな」

「確かにそうですが」


 家令のジェフリーに断絶結界が使えることはバレているので、陛下にも伝わっているのだろう。


「ジェフリーが見間違うとは思わんし、断絶結界が使えるのなら十分にSランクの基準を満たしていると思うがな」


 断絶結界は結界の中でも最高レベルのものである。

よって、使える魔術師の数も限られているらしい。


 ヴィムの周りでは使える人間がいた為感覚が麻痺していたが、おそらく使えるものは10人いればいい方だろう。


「君の戦いぶりを聞いたが、Sランクにしてもどこからも文句は言われないだろうよ」

「分かりました。じゃあ、もうSランクでいいです。深淵の魔術師の二つ名も受け入れます」


 ここで何を言っても状況は変わらないだろう。


「それと、Sランクになったら賞金も出るからな」

「お金はいらないと言いましたが?」

「規則だから仕方ないだろう。もらっておきなさい」


 Sランク冒険者になると、功績が認められたとして、国から賞金が授与されるのである。


「分かりました。いただきます」

「よろしい。後、君の拠点となる屋敷も用意させた」

「あの、さすがにやりすぎではないでしょうか?」


 ヴィムはただ、断絶結界を張ったに過ぎない。

まさか、ここまで話が発展するとは思っていなかった。


「いや、娘の命の恩人にこれでは足りないくらいだ」


 陛下は真剣な表情で言った。

どうやら、本気で思っているらしい。


「分かりました。もう、全て受け入れます」


 ヴィムは諦めた。

ここはもう、自分が受け入れるしか方法はないだろう。


「うむ。後で君の屋敷まで案内させよう。君の家だから好きに使いなさい」

「そうさせていただきます」

「それじゃあ、今後の活躍を期待しているからな」


 陛下はニヤッと笑った。

この人には全てを見透かされているような気がする時がある。

陛下がヴィムに何を期待しているのか、今はまだ分からなかったがそれはいいずれ明かされることになる。


 ヴィムがSランクに認定されたことは遅かれ早かれ帝国には伝わるだろう。

今後、帝国がどう動きを見せるのかは実に見ものである。

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