第12話 国王陛下
ヴィムの対面には国王と王女様が座っていた。
「改めて礼を言おう。娘を助けてくれて感謝する」
「いえ、私は少しだけ手を貸したに過ぎませんので」
「そんなことは無いぞ。君があの場に現れなければ娘は殺されていたかもしれない」
確かに、あのままならその可能性も確かにあった。
だが、ヴィムがやったことはせいぜい断絶結界を張ったくらいだろう。
「何か望みはあるか? たいていのものなら用意しよう。爵位でも家でも金でも好きなものを言いなさい」
「いえ、そんなに頂けませんよ」
ヴィムには何かを貰うつもりでとった行動では無かったので、報酬も期待していなかった。
「いや、うちにもメンツというものがある。何もしないというわけにはいかないのだよ」
やはり、仮にも王家が助けてもらった相手に何もしないというのは許されないらしい。
確かに、側から見たら王家が何もしなかったら印象派は良くないだろう。
「では、冒険者資格を頂けないでしょうか?」
「は?」
エルドレット陛下は驚いた表情を浮かべた。
「なんでしょうか?」
ヴィムは何かおかしな事でも言っただろうか。
「そんなものでいいのか?」
「はい、逆に助かりますし」
他国で活動するには立場を確立する必要がある。
それが冒険者というのが1番手っ取り早いし、社会的信用も置ける。
何しろ、冒険者資格というのは国が発行しているのだ。
まあ、ギルドに一任していることがほとんどであると思うが。
「分かった。すぐに手配させる。それと、大体の事情はエリンから聞いた。災難だったな」
「はい、ありがとうございます」
ヴィムが帝国を去った理由はエリンが伝えてくれたらしい。
「今日はここに泊まっていくといい。まだ、うちの国には慣れていないだろう」
「助かります。お言葉に甘えさせていただきます」
この国の事情にはまだ疎いのでこういう配慮はありがたいと思う。
「うむ、ゆっくり休んでくれたまえ。おい、案内してやってくれ」
陛下は控えていたメイドさんに声をかけた。
「かしこまりました」
ヴィムは王宮の中をメイドさんに案内されて歩いていく。
「こちらをお使いください」
しばらく歩いた後に、客室と思われるところに案内された。
「ありがとうございます」
「何か不自由がありましたらお申し付けください」
高そうな調度品に天蓋付きのベッド、大きな窓に高い天井。
何もかもがすごく豪華な部屋である。
「すごいな……」
おそらく、貴族たちが使うのだろう。
一人では持て余してしまうほどの部屋である。
ヴィムはなんとなくベッドに横になってみた。
フカフカしていてとても気持ちがいい。
こんな感覚は何年振りだろうか。
ヴィムはやがて意識を手放したのだった。
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