第3話 安全エリア
ヴィムは次の階層へと進むべく、階段を降りた。
「マナはあるな」
どうやら、二階層は安全エリアではないらしい。
まあ、二階層で安全エリアになることなどはほとんど無いので分かってはいたが。
安全エリアは空気中のマナ濃度が完全に無くなる。
正確にはほんの少しあるらしいが、普通の人間では感知することが出来ない。
だからこそ、魔獣が存在しないのだ。
ごく稀に他の階層から迷い込むことはあるらしいが。
「最短ルートで行きたいな」
索敵魔法により大体の魔獣の位置は分かる。
無用な戦闘は出来るだけ避けたい。
ヴィムも体力が無限にあるわけではないのだ。
温存出来るところでは温存しておきたい。
「そんなに甘くないですよねぇ」
しかし、思うように行かないのが迷宮である。
「狼さんですか」
ヴィムの前にはブラックウルフの集団が現れた。
「燃えろ」
ヴィムがそう言うと、ウルフの下に赤い魔法陣が浮かんだ。
そこから、炎の渦が生まれてウルフどもを焼き払う。
ヴィムは一歩も動くこと無くしてウルフどもを一掃した。
「この辺の魔獣は問題無いな」
迷宮に出現する魔獣は弱くは無い。
それを、こうもあっさりと倒されてしまうとは流石である。
そこからも、出て来る魔獣を蹴散らしながら迷宮探索をしていく。
歩くこと数分、ヴィムは次の階層にと続く階段を発見した。
「ここだな」
その階段を降りて3階層へと足を踏み入れる。
3階層にはマナが充満していなかった。
マナ濃度が薄いというより、ほとんど無い。
これが、いわゆる安全エリアというやつである。
ヴィムは索敵魔法を広範囲に展開する。
「魔獣もいないみたいだな」
索敵魔法にも魔獣のような魔力生命体の反応も無い。
ここが安全エリアとみていいだろう。
「とりあえず、ここでしばらくは過ごすか」
ここなら魔獣に襲われる心配も薄い。
拠点とするならちょうどいいのでは無いだろうか。
「食料もしばらくは持つし、飲み物も心配ないな」
ストレージと呼ばれる収納空間には大量の食料が放り込まれている。
これは、何かあった時のための非常用だ。
持っていてよかったと今になって思う。
水は魔法で生み出せば無限に出てくるので、そっちも問題は無い。
残る問題はどうやって脱出するかというところになって来る。
「まあ、ゆっくり考えるとするか」
ヴィムは手頃な岩に腰を下ろした。
時間は腐るほどあるのだ。
「でも、ただ脱出するだけじゃ面白くないよな」
ヴィムは常人には理解できないようなことを考えてた。
「この迷宮、最深部まで攻略してみるか。暇つぶしくらいにはなるだろ」
この時、ヴィムは通常は10人ほどのチームで攻略する迷宮に一人で挑もうとしていた。
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