第2話 最強の魔術師は幽閉される

 ヴィムは帝国の衛兵に拘束されると、そのまま馬車に乗せられた。

拘束されている鎖は特殊な金属が使われているようで、魔術を大幅に軽減するようである。


「どこに連れていくつもりだ?


 ヴィムはドスの効いた声で言った。


「それは着けば分かることだ」


 連行する衛兵はそれだけしか言わなかった。


 ヴィムの体感では1時間ほど移動した時、馬車が止まった。


「降りろ」


 衛兵がぶっきらぼうに言った。

そこは、帝国の外れにある迷宮だった。

確か、かなり上位のランクに位置付けされた迷宮だ。


「じゃあ、せいぜいこの迷宮で頑張ってくれ」


 そう言うと、衛兵はヴィムの背中を押して迷宮に放り込むと入り口を閉じて閉じ込めた。

更に、そこから結界を張る。

これで、迷宮を脱出することがかなり難しいものになった。


「まずいな」


 とりあえず、このままではまずい。

迷宮ということは魔獣も出る。

ここがまだ一階層としても、通常の魔獣よりはレベルが高いものとなる。


 馬車に乗っている時に連続して発動させていた魔法のおかげで、拘束されている鎖は緩んで拘束からは解放された。


「やっぱり、難しいか」


 迷宮の出口に魔法をぶつけてみたが、ダメだった。


「頑丈な結界だな。ヤツの仕業か」


 ヴィムの魔法で突破できない結界を張れるのは帝国でも数少ない。

おそらく、この結界を張ったのは宮廷魔術師長だろう。


 魔術師長は攻撃より、守りの戦いを得意とする。

よって、結界の一つや二つ張るのなんて朝飯前だろう。


「断絶結界だな」


 断絶結界は結界の中でも最上位に当たる。

魔術や物理攻撃を完全に弾き返す。


 魔術師長の結界を突破するのはおそらくヴィムでも難しい。


「マナの感じからすると上級迷宮ってとこだな」


 迷宮にはマナと呼ばれる魔力エネルギーが空気中に漂っている。

これを体外に放出するイメージで魔法が発動するのである。


 魔獣はこのマナから生まれた魔力生命体である。

つまり、マナが無いところでは生命を維持することも難しい。


 空気中に漂うマナの濃度から推察するに、ここは迷宮の中でもかなり上位に当たるだろう。


「とりあえず、安全エリアまで移動するか」


 迷宮には魔獣が存在しない階層というものがある。

そこなら、比較的安心して休めるため迷宮攻略をする冒険者などからは『安全エリア』と呼ばれていた。


 ヴィムは索敵魔法を展開しながら迷宮内を歩き始めた。

どこかに、迷宮の階層を移動する階段があるはずだ。


「すっこんでろ」


 途中、襲ってくる魔獣どもは炎魔法で消し炭にしてやった。

一階層なのでまだ魔獣は弱いものしか居なかった。


「お、あった」


 そうこうしているうちに、ヴィムは次の階層に進む階段を見つけた。

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