第15話 激戦

 最早、何度目になるか――ラミュアが銃口を僕に向ける。


 瞬間、その手を水野さんが上空に一蹴――弾き飛ばした。そして、落ちてくる拳銃を両手に取り、ラミュアに照準を定める。


 ……この間、一瞬のことだった。


 な、なんか、神がかり的なバトルが始まった。

 ラミュアは僕を抹殺するために、水野さんは僕を守るために。顔面を殴られた時から思っていたけど――水野さん、めちゃくちゃ強くない? 拳のめり込んだ箇所が痛む。

 形勢逆転、水野さんは毅然とした態度で、


「ラミュア、下がって」


「わかっていただけないのなら、仕方ありませんね。降参――」


 ラミュアが両手を上げる。水野さんは僕に振り向き、


「逆巻君、だいじょう」


 ぶ、と安否確認を聞き終わる前に、


「――しませんっ!」


 その間隙を突き、ラミュアが拳銃を左右に弾いた。

 強制的、水野さんの両手が大の字に――バランスを崩す。間を見逃さず、ラミュアが距離を縮め、僕に腕を伸ばし――頭を掴まれ、引き寄せられる。

 ラミュアはニヤリと不敵に笑い、


「俺はスイカでも素手で握り潰せる」


 あ、握力のみでやる気だ。

 万力のよう、僕の頭に指がめり込み――そぃいん! つぃほぉっ! と、あまりの威力におかしな声が出る。体は宙に浮き、自然と足がバタつく。


「盛大に爆ぜろ、生ゴミくず野郎!」


「……っ。ラミュア! いい加減にし、てっ!!」


 かけ声と同時、衝撃音が鳴り響く。

 ラミュアの腹部に水野さんの肘が入り込んだ。かなりの威力なんだろう、苦悶の表情を隠しきれていない。若干ながら、指の力も緩和された。しかし、ラミュアは離さない。

 ラミュアは膝を震わせながら虚ろな瞳で、


「ふ、ふふ。ぎゅき、き、効きませんよ」


「っ! で、ぁぁああああっ!!」


「ぐっ! ごっ! 待っ!! ちょ、ほぉおおっっす!!!」


 水野さんも躍起になってか、乱打を繰り返す。

 その都度、ラミュアの体が右往左往――ついに耐え切れなくなったのか、僕でガードをし始めた。タイミングよく、水野さんの攻撃に僕の身体を合わせてくる。


「おやめください、姫!」

「ちょ、ぶっ、水野さん!」

「逆巻君を離して!」

「おやめください、姫っ!!」

「ぼ、っぼぉお、僕っ! ふぅ、ぽきょお! 当たってまぶぅ!!」

「逆巻君を離してっ!!」


 聞いてます?

 我を忘れているのか――攻撃がやむ気配はない。一撃、一撃の破壊力がマッスルパワーに満ち溢れている。このままでは、水野さんの手により永眠してしまうのも時間の問題だろう。

 あぁっ! 意識が、お花畑がっ!! なんか気持ちいひひぃ――、


「二人共、落ち着きなさい」


 ――凛とした声。

 霞む視界の端に女性が見える。女性は微笑しながら僕らに近付き、


「ほら、その少年が死んじゃうよ?」

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