第2話 同じ時間に二度会う不思議
「今回は、倒れてないんだね」
「む。また、その美味しい食べものをくれるのか?」
僕の右手にはおにぎり、左手には唐揚げ。
時間が巻き戻る前の再現として、同じ状況を作り出してみた。そうすれば、天子がいると思ったからだ。
予想通り――天子はいた。
「時間を巻き戻した感想は、どうじゃった?」
「……にわかには、信じられなかったよ」
だけど、信じざるを得ない。
「中々に、面白かったじゃろう。時間を巻き戻せば、過去をいじくり――未来を変えることができる」
天子は左手の唐揚げを、嬉しそうに口に運ぶ。
「おかげさまで、テストはパーフェクトだったよ」
「むぐ、むぅ。それはよかった」
続けざま、右手のおにぎりを頬張った。
ぷふぅ、と満足気な息を同じく。天子は口周りに付いた米粒をぺろりと、
「それにしても、意外と容易く受け入れたんじゃのう。……逆巻巡(さかまきめぐる)よ」
あれ? 僕、名前なんか言っていな――、
「私立戸具路高校に通う高校二年生。生まれついての悪質な顔のデザインに、極悪人のような目付き――せめて、一人称は紳士にいこうと『僕』を心がけている。が、ギャップがありすぎて余計に怖いと浮きまくる。それ故、校内で友達はいない。同じクラス、隣席の女子が気になって仕方ない、と。いつも悲しく一人で登下校、買い食いも必然的に一人となる」
――いぃん!?
「ふふ。心理眼じゃ」
し、心理眼?
首を傾げる僕、天子は指で丸を作りながら、
「天子には見える、見えてしまうのじゃよ」
見える、見えてしまうって――驚きを通り越して怖さすら感じる。
確かに、生まれついての悪質なデザイン、極悪人のような目付き――補足するなら、いつも怒ってるよね? とか。いつも獲物を物色してるよね? とか。いつも世界征服を考えているよね? とか。紳士的な態度を取ろうものなら、なにか裏があるのか金を要求しているのか、と疑われて逆に溝が――溝どころか底なし沼だった。
まず間違いなく、目が合った相手は光速で逸らす。
戦々恐々なイメージばかりだけど、僕自身は本当に普通の人間なんだ。悪質なデザインのせいで、全ての行動が裏目に出るだけで。
……天子が言ったことは紛れもなく事実だ。
言い当てられた僕が一番理解できる。そこまで詳しく自分のことを説明されると、されると――喜ぶ箇所あった? あれれ、目からスプラッシュ。
「……天子。君は一体」
普通の女の子じゃない。
だったら、なんだ? 何者なんだ? 超能力者とか? 宇宙人とか? 異世界の住人とか? それとも、天使? 脳内でクエスチョンマークがひしめき合う中、
「驚くなかれ」
その全ては大きく裏切られ、
「天子はこの世界の神様じゃよ」
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