第13話 殴られた

南を送って

家に帰りついたのは

19時を過ぎていた


南は家の前についても

なかなか中に入らないから


近くの公園で

また

少し話したから

遅くなった


玄関に手を掛けたら


「壮!!」


声を掛けられた

真緒の声

俺が振り向くと直ぐに後ろに立っていた


「びっくりした!!お前、いつからいたの?」


真緒はむっとした顔で


「駅から」


駅からって

10分以上も?

気が付かなかった


「じゃ、もっと早く声かけろよ」


そう言うと

真緒は不機嫌な顔で


「かけられなかった

なんだかニヤケてたから・・・」


俺、どんな顔して歩いていたんだろう?

少し恥ずかしい


「なんか良い事あった?」


真緒が聞く


「別に・・・なんで?」


真緒はこちらを真っすぐに見て


「南と一緒だったんでしょ?」


怒ってるの?

何で?

お前だって

こんな時間に帰るってことは

刀川と居たんだろ?


「ああ、そうだけど」


俺がぶっきらぼうに言うと真緒は急に悲しそうな目になる


「南の事、好きなの?」


「なんで?」


「好きなの?」


「関係ないだろ!!」


強く言いすぎた


「・・・」


何でそんな顔すんだよ

おかしいだろ?


お前・・・刀川の彼女だろ?


俺は沈黙に耐えかねて

家に入ろうとまた

ドアに手を掛けると


”ガン”


背中を思い切り殴られた


「いてぇ!!」


振り返ると

真緒は走って自分の家に入っていった


痛い

マジで殴ってきやがった

何なんだよ!!

アイツ・・・マジで・・・


俺は真緒が分からない


こんな事あったな


小学6年のころ

久しぶりに真緒がサッカーしに俺たちの所に来て

ちょっとアイツ

前とは違ってて

みんなそれをなんとなく感じてた

わざとではないんだけど

浩太が

けっこう激しくぶつかって

二人で思いっきり転んで

浩太が、真緒の上に居て

手をついた場所が真緒の胸で・・・

ムニュって掴む様なかんじに見えて

みんなビックリして凝視してたら

真緒

勢いよく跳ねのけたけど


恥ずかしかったのかな?


何も言わないで帰っていったから

俺、心配になって追いかけたけど

アイツ

何もしゃべらないから


「真緒、真緒待てって

何、意識してんだよ

浩太のこと

好きになっちゃった?」


って

ふざけて言ったら

アイツ

思いっきり俺の背中

殴って

走って帰ったよな・・・


冗談じゃん

真に受けんなよ


あん時も

アイツの事

分かんねーって思ってた


俺たち

変わんねーな


アイツの事

いっつも怒らせてるな・・・俺





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背中にキス 成瀬 慶 @naruse-k

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