第10話 遅い
夏休みが終わり
学校が始まった
休み時間の度に
刀川は真緒の事を廊下に呼び出し
俺が見える場所で手を握ったり
髪を撫でたり
とにかくいちゃついていた
真緒が困ってるのに
アイツ
俺に見せつけたいだけで
何やってんだよ!!
腹が立っていた
「真緒ちゃん
夏休みで一個上に上がったね」
悟が俺の耳元で言った
「何だよ?」
睨む俺に
不敵な笑顔で
「壮!怖いよ~
何で怒るの?」
ふざけやがって
「別に」
ふて腐れるように顔を横に向けると
悟は俺の視界に無理やり入ってきて
「花火大会の日
刀川と真緒ちゃん見かけたんだ
暗がりでチューしてたよ
あれは・・・最初のチューではないな
こなれてた」
感心したように語る
「お前は何でそんなとこに居たんだ?」
こいつ
俺と南を置き去りにして
どこ行ってんだよ!!
「もちろん
俺も幸とイチャイチャしようと思ってね」
思い出してニヤニヤする悟
「お前さ、幸と付き合ってるの?」
冷めた視線で見る
「いや」
あっさり答える悟をさらに俺は睨む
「は?」
悟はへらへらしながら
「ひと夏のアバンチュール」
妙な英語を使う
腹立つ
そして続ける
「夏・祭り・花火ときたら恋だろ?」
コイツの頭の中を理解できない
「意味わかんねー
幸の事を気に入って連れて行ったのかと思ってた」
すると悟は
少し真剣な表情で
「ま、幸って小さいわりに
オッパイ大きいし
いっつも笑顔で天然で可愛いからね
全く萌えない子には
さすがの俺も手は出さないよ
でも
南でも良かったんだけどね」
何言ってんだ?
「?」
はてなが頭を占める
「南はお前の横に居たし
ちょっと固い所が所があるから
いざとなって
”ここではしたくな~い”
何ていわれたら困っちゃうしさ」
呆れて言葉が出ない
「お前・・・」
心底、ちゃらんぽらんな奴だ
「壮、ひいちゃった?」
逆に笑えて来た
「引くよ」
悟はそんな俺に今更言い訳
「アッ最後まではしてないよ
外だし
浴衣だし
チューしてイチャイチャしただけ
浴衣が脱げない程度にね」
俺は頭を抱え
悟の顔を見る
「あっ刀川と真緒ちゃんは服だったからな~
あの後、どこまでしたんだろうね?」
そうか・・・
刀川と真緒
あの日、そんなことしてたんだ
なんとなく
想像はしたことがあったけど
聞くと辛いな
真緒
しっかりあいつと付き合ってるじゃん
俺の事好きだったなんて
いまさら言うなよ
ずっとしまっとけよ
俺、あいつから奪いたくなるだろ?
台風の日
真緒の部屋に行けばよかった
もしかしたら
強引にでも抱きしめて
キスをして
インターフォンがなっても
聞こえないくらい
抱きしめて
好きだって言えばよかった
そうしたら
今頃
こうして教室から廊下を眺め
イライラすることも無かったのかもしれない
俺はいつだって
一歩も二歩も遅い
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