第9話 雨戸の向こう

真緒が上がって行ってから

30分は過ぎたかもしれない


何も音もしないし

降りてくる気配もない


だけど

追いかけていいかも分からない


だって

俺に呆れて

ココから逃げて行ったのに

それを追いかけても

ウザいよな・・・


どうしよう


風邪もおさまってきたし

帰った方がいいかな?


”ピンポン”


その時

インターフォンがなった


真緒・・・聞こえてるかな?


”ピンポンピンポン”


出た方がいいかな?

俺は立ち上がりインターフォンを覗く


「はい」


画面に映ったのは

刀川


「えっ?あれ?あの・・・」


刀川が動揺している

どういう事?


刀川の事

呼んだの?


俺は階段の下から


「真緒!真緒!!刀川が来てるよ」


そう呼ぶと

真緒は慌てて下に降りてくる


「どうして?」


俺に聞く

知らねーよ


真緒は玄関に向かうけど


「真緒!下

ちゃんとはけ」


そう言って足を指さす

真緒は顔を赤くして

急いでもう一度

自分の部屋に戻り

ジーパンをはいてきた


「これでいい?」


俺に聞くな!!

そう思いはしたけど

不機嫌い頷く


”ガチャッ”


玄関を開けたら

スマホを見ている刀川


「真緒・・・

今日、家に一人で留守番だって言ってたから

台風が心配で来たんだけど・・・」


「そうなんだ・・・」


そう言う真緒の向こうから

刀川はこちらを覗き込み

俺の事を見ると

あからさまに嫌な顔になる


「何してたの?」


真緒は困ってるかな?

こちらからは顔は見えない


「心配だったから来ただけ

俺の家

隣だから・・・お前が来たんなら

俺はもういいか・・・」


そう言って

俺は真緒の横を通りぬけサンダルを履く

真緒の顔は見れなかった

刀川が俺が家に入るまで睨んでいるのが分かった


不完全燃焼だった

真緒への気持ちを言って

真緒の気持ちを聞いて

だけど

答え合わせは終わっていない

俺たちは

今からどういう思いでお互いを見ればいいのか

分からないままだった

なのに

どうして身を引いたのかは分からない

別に遠慮なんてしないで

そのまま刀川にも言えばよかったんだ

真緒はそうしていたら

どちらをとったのかな?

本当は帰りたくなかった

刀川と真緒を二人きりになんてしたくなかった

だけど

アイツが困るのは嫌だった


俺は部屋に戻ってからも

真緒の家を見ていた


全部の窓の雨戸が閉まっているから

どの部屋にいるかも分からないけど

二人きりで

いることには違いなくて

刀川は

俺よりもちゃんと真緒へ気持ちを伝えているだろうし

真緒だって分かってるだろうし


だって

祭りで手

つなぐ仲だもんな


考えたくないけど

考えは止まらなかった


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る