第8話 髪の毛

数分後

電気が付いた


真緒は俺から素早く離れ

背中を向ける


さっきの時間

何だったんだ?と思うくらいにあっさり


真緒

どんな顔してるんだろう?

気になる


「あっそうだ

部屋に忘れ物・・・」


取ってつけたような言い訳をしながら

その場を離れようとしている真緒を

引き止めるように

背中から抱きしめる


真緒は固まった


「真緒・・・俺の事どう思う?」


精一杯の言葉だった

でも

こういう時

質問ではなく

潔く

自分の気持ちを言うべきだったのかな?

正解は分からない・・・


「どうって・・・何?」


そうだよな

そう言うしかない質問だ

俺ってバカ?


「俺は真緒が好き」


しばらく時間が過ぎて・・・


「南は?」


何の話だ?


「南の話し

関係なくない?」


「関係ある

花火大会の日

足ケガした南をおんぶして帰ったんでしょ?」


聞いたんだ・・・

隠していたわけではなしけど

知られたくなかった


「したけど・・・

何でそれでそんな感じ?

ケガしてるんだから

仕方ないじゃん」


「タクシー乗せたらいいでしょ?」


「そっか」


「”そっか”って

そう思わなかったの?

おんぶって想像してみて

ものすごく恥ずかしいよ

特に女の子は

太もも触られるし

身体ひっつくし

恥ずかしいんだよ」


「・・・」


「何も思わなかった?」


「・・・」


「ねぇ

どうなの?壮」


真緒がこちらを向いて

ムキになってるから


俺はよくわからなくて


「お前、何怒ってんの?

関係ないだろ?

俺はお前が好きだって言ってんのに

南をおんぶした話ばっかりしてさ

お前の話ししろよ!!」


少し怒ると

真緒は下を向いて


「好きじゃないよ

もう好きじゃない」


もうって・・・何だ?


「南

壮が好きだって

頑張るって」


南が・・・俺を?


「あの日、ドキドキして

壮が頭から離れないって

応援してねって言われたら

”いやだ”なんて言えないよ

友達だから」


・・・だから・・・もうなのか?


「真緒の言ってる事

よく分からない

”もう”ってどういう意味?」


真緒は俺の方をしっかり見て


「好きだったよ

ずっと

ずっと前から

壮が髪の長い子が好きだって言うから

伸ばしたし

ワンピースが似合う子が好きだって言うから

そういう服ばっかり探してた

だけど

全然だめで

私の事なんて

いつも見てなくて・・・女の子として見てくれなかった」


知らなかった

真緒の気持ち

髪・・・伸ばしたのって俺のためだったの?

気が付かなかった


俺は

どうやらバカのようだ

真緒の事好きになって

一人で追いかけていたくせに

彼女には全く伝わっていなくて

こんなに不安にさせていた


好きだって

もっとわかりやすく真緒に伝えていたら

こんな風に思わせなくて

すんだのかもしれない


真緒は立ち上がり

自分の部屋へ行った


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