第5話 おんぶ
河原にはぎゅうぎゅうに人が溢れていた
あまり前にいくと
南は背が低いから埋もれてしまいそうだから
少し人混みから離れた場所で見ることにした
俺は近くでラムネを買ってきて
南な渡した
「あっ有り難う
お金…」
南がそう言って
巾着袋から財布を出そうとするから
「いいよ
ほら、もう始まるよ」
そう言って
俺は空を見た
"ひゅ~っ…ど~ん"
花火が始まった
俺は、それを見上げ
夢中に見ているふりをした
でも
頭に浮かぶのは
真緒と刀川の繋がれた手
二人も
今頃、このどこかで
同じ花火を見上げているのかな?
悔しいな~
悔しいな~
刀川…真緒の何を知ってるんだよ
そう思うと
気が付くと俺は
拳を握りしめて
涙がこぼれたいた
花火が終わると
俺たちは流れに乗って駅へ向かった
南は何か色々話をしてくれていたけど
俺の耳には入らなくて
まわりの雑音と同化しているようで
俺は適当に相槌を打っていた
駅前のバス停で俺たちは
悟と幸のスマホに電話した
もうここで1時間は待っているから
あれだけいた人が
もうパラパラしかいなくなって
静かで・・・
遠くから駅の改札の電子音が
ここまで聞こえるほど
さみしかった
「出ない・・・」
「こっちも・・・」
着信音が聞こえないのか?聞かないのか?
「何やってんだよ!あいつら!!」
少し悟に苛立っているっと
メールが入った
”先に帰って”
短い文面に
二人が上手く行き始めたことを感じた
”しょうがないな”
ため息をつき
俺は立ち上がった
南も立ち上がり
「じゃ、私
次の電車で帰るから
壮くんも帰って」
「家の近くまで送る」
そう言うと
南は全力で遠慮して
「いいよ!!
私、5駅も先だし
壮くん逆方向だし
一人で大丈夫だよ」
「でも、あいつらから待たされて
遅くなったし
俺が
嫌だから・・・行くぞ!!」
おれは強引に南を送ることにした
次の電車に乗り
5駅先の初めて降りる駅に着いた
そこから
バスを見たら
南の乗るはずのバスは既になくなっていて
「壮くん
ありがとう
ココで大丈夫」
「大丈夫じゃないだろ?
家どこなの?
歩ける距離?」
俺が聞くと
南は小さな声で
「歩いて20分くらいだから
大丈夫」
少し遠いな・・・
街ではないから人通りも少ないし・・・
俺は南の立ち方に違和感を持ち
足元を見る
履きなれないからか?
両足の下駄の鼻緒が指の股に食い込み
擦れて真っ赤に腫れていた
「南・・・大丈夫か?」
「大丈夫、大丈夫」
そう言って南がそれを隠そうとして
顔を歪めながらかがんだ
「大丈夫じゃないだろ!!」
俺はしゃがんで背中を南の方に向け
「早く!!」
南は声を裏返らせて
「いいよ!!大丈夫だから
家、遠いし!!」
「早くしろよ!!」
うだうだする南に少し強めに言うと
南は観念して俺の背中に乗った
俺が少し飛んで
南の両足を抱えるようにガバット無理やり開いたから
「キャッ」
南が驚いて声を出した
「こうしなきゃおんぶ出来ないし
前からは見えないから我慢しろ!!」
俺は、その声に恥ずかしくなって
そっけない態度で言った
顔が見えないからよかった
俺だって
女の子とこんなに近付いているんだから恥ずかしい
顔が赤いことがばれなくて済む
それより
早く家に帰さなきゃ
南の家族だって心配しているだろうし
何より足が痛そうだから
それが心配で必死だった
特に会話はしない
ただ
道案内だけ
南は申し訳なさそうにした
住宅地について
「あの街灯の横が家だから
ココで大丈夫」
俺は南をゆっくりおろす
南は、はだけた浴衣を急いで整える
見るといけないと思って
俺は、あからさまに目を逸らす
「ありがとう」
南は照れ笑いを浮かべながら
こちらを見た
俺は小さくうなづく
「じゃあな!!」
そう言って
帰ろうとすると
南がもう一度俺を呼び止めるように
シャツの裾を引っ張る
「ラムネも・・・ご馳走さま」
俺が振り返ると
南は目を逸らした
なんだ?
さっきまで
全然、目あわせて話してても何も思わなかったのに
その表情・・・女っぽい
ドキッとする
「ああ、こっちも
有難うな」
俺はそう言うと
自分の心が南に読まれないように
顔を背けて
足早に逃げるよう帰った
ドキドキした
背負って歩いている時は
必死だったから
何も思う余裕なんか無かったけど
今思うと・・・
俺は今更
状況を思い出し
興奮してしまい
電車に乗りる気になれないで
そのまま
家まで2時間近く歩き
家に帰った
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