第4話 花火大会

花火大会


俺は、約束した手前

南と幸

悟と一緒に行く


浴衣姿の二人は

学校で見るより二倍ましに見えるけど

やっぱり真緒が気になっていた


俺は、どこかで会うんじゃないかと

キョロキョロ回りを見た


「じゃ、俺らはあっちにいくから!」


悟が幸の手を強引につかんで

消えていった


残された

俺と南は、その場にしばらく立っていた


「幸…さらわれちゃったね」


「ああ」


あっけにとられた俺たちは

二人で河原の方へ歩き始めた


屋台の明かりが沢山あるから

昼間みたいに明るくて

子供たちも走り回るから


小学生が南にぶつかって

よろける


「大丈夫か?」


引き寄せた拍子に

抱き寄せたようなかんじになって

南は頬をピンクにするから

俺だって

少し照れる


「南!」


その時、聞きなれた声がした

俺たちは声の方を見ると

そこには

真緒と刀川が立っていた


真緒は浴衣ではなく

白いノースリーブのシャツワンピースで

肩のところがフリフリしていて

女の子らしく見えた

こんなかっこうするなんて


やっぱりデートだよな…


俺が真緒の始めてみるフェミニンな姿に

ガッカリしていると


「あっ、真緒…

幸と悟くんが消えちゃってね」


そう言いながら

南は俺から急いで離れた


「えっ二人は付き合ってるじゃないな?

デートかと思った

イチャイチャしてたから…」


刀川はそう言ってにこりと笑った


「違うよ

四人でって言ってたし

そんなんじゃないよ」


真緒が真顔でそう言うと


「いやいや

二人だし

引っ付いてたよね」


刀川は真緒をあおるような口振り


「いや、南が転びそうだったから

俺が引っ張っただけだよ」


妙な空気感


俺は真緒に誤解されると嫌だったのもあるけど

南にも悪いと思って刀川に弁明すると


「なんだか変なの…

みんなムキになってさ…

俺は見たままを言っただけなのにな~」


そう言って真緒の方を見る


「ムキになってなんかないよ

違うのに

そういわれたら

嫌だろうから…」


真緒はそう言うと

こちらを見ないで歩き始めた


なんか怒ってる?

それとも

刀川と喧嘩してた?


刀川は俺たちに小さく手をふって

スタスタ歩いていく真緒を追いかけ

横に並ぶと真緒の手を握った


手を握った


手を握った


やはり

二人は付き合ってるようだ


俺は顔面蒼白

立ちすくんでいると


「壮くん…大丈夫?」


南が心配しているから

俺はあからさまな作り笑いを見せて


「ああ、じゃ、行こうか」


そう言って

南と花火の見やすい場所へ移動した

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