第52話 ストップウォッチ

体力測定があったんだった。雨が降らないかなと呪っても晴れてしまう晴れ女の私は雨女が私より強烈であることに賭けた。翌日晴れだった。もうめっちゃ晴れ。勝っちゃったんこれ?未だ見ぬ雨女との勝負の片は思ったより早くついた。晴れに投票した人多かったのかな運動場広いしよそのクラスの人とも喋れるから何か休み時間違うクラスに行きにくい雰囲気あるし。その教室で空気が違う。今は今まででだいぶ居心地がいい方だった。ここは穏やかな王国だ。王子様がいないから争いがないし女王様もまぁいない。涙も憎しみもない絵本の国。6クラスが一堂に会するから外は大変ざわざわしていた。ここぞとばかりに他のクラスの人と喋るんだろう。怒られそうだな。陰キャまで怒られ時がある。それが集会とかわちゃわちゃしがちなとき全般によくある。上靴で運動場行っちゃだめだよ。睨まれそうだから直接言わないけど。怒られても知らないからね。あー汚い。下履きに履き替えた私は雑踏の中を掻き分けるようにして歩いた。「あー佳乃やん」「青井さんだぁ」同じクラスの陽キャの人になめられてるわ。勝手に呼び捨てとかやめて。何で陽キャは距離を詰めるのが得意なんだ。誰か陽キャ解体新書作って。千円で売るから。大したこと話してないのに私がグループから抜けた途端これだ。私が誰のものにもならなかったとか喧嘩したと思われたんだろうか。絡まれるのは悪くはないけど私のそういうところを良いと思わない連中に目を付けられたらやっかいなことになるのに。まず並ばされたのはボール投げだった。ボール球技は全部怖い。ドッヂボールからサッカーまで全部無理。なんか野球のボールを持たされて投げる。線の中からはみ出したらやり直し。ぼてっ。私の投げたボールは全然飛ばなかった。うん運動できたら嫌味だからちょうどいい。5メートルのところで止まる。もう一回投げる。一緒。後ろに並ぶ。終わった。皆私より飛ばすねぇ。推しのバラエティでの活躍を思い出しながら他の方を眺めていた。体育館と飛ぶやつ、50メートル走があった。あと柔軟と握力の測定など。それだけで一日が潰れるので今日は可愛い子の体操服姿が拝める日である。腕が短い体操服から出ていて可愛い。上級生の胸ばかり見てることに結月は気づいてないみたいだ。良かった。めっちゃボールが飛ぶ子がいてびっくりした。まなはじーっとお利口さんにしてた。偉い。そろそろ先輩のクラスとぶつかるかな。砂を払って佳乃は移動し始めた。

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