第42話 カーテン(コール)

お昼休み皆ときどきこっち見てるけどすぐに目を逸らす。何もしてないのに。ただ弁当を食べる輪から外れただけ。"I like to eat in school by myself anyway' 岩波児童文庫にはずいぶんお世話になった。一人で食べたほうが残さず食べれるし上辺だけを撫ぜるみたいな会話に入っていけない。ひとと趣味をあわせようとも思わないし合わせて欲しいとも思わない。お弁当は今日も美味しいから私的には問題ないんだけど。急に離れるからびっくりしてるかな。今まで道りに話しかければ話してくれるし怒ってはないでしょう。退屈してたの知ってそうだし。遠い席から楽しそうにしてる君を見て安心した。好きな曲がかかれば教卓の前まで犬みたいにすっとんでいくから可愛い。ときどき一瞬目が合うような気がしたら微笑んでしまうよ。君は気持ち悪いと思うかな。私は足音をたてずに歩くけど君は少し軽い音を響かせる。この歩き方は長い距離を歩くために身に着けた。今は君から弁当を残すという言葉を聞きださないので正直ほっとしているよ。君はゆっくりと歩くからすぐ追い抜かせるんだけど並んで歩いきたいとかね今更言えないか。つかず離れずとは違う距離感君の声だけはちゃんと聞こえる場所にいるよいつも。見えないものをあるんだと思い込むことが駄目ではないけど私は永遠にカーテンの向こうにいるから雨が降ってるときは閉めてるの。同じカーテンに入っておいでよとは言わないでおくよ。来てもいいけどね。おいでよゆづにゃん引っ掻いてもいいよ。カーテンに巻き付いて本読んでるよ。勉強は読み終わってから。爪はちゃんときろうねひとのこと言えないけど。チャイムが鳴り終わるまでに全部曲がきけるかな。微妙なところで放送が始まって途切れることが多い。伝えたいこと話したつもりでも納得してくれないみたいに。知らないうちに主語を大きくしていたり主語がなかったりする。筆談だったらちゃんと書けるのに。大きくて四角い字になっちゃうけど線の掠れやはらいかたで精神状態読まれそう。私の不器用な真面目さが字にまで出てる。もっと丸い字を書けと言われても直せなかったんだ。あなたは私と別の意味で真面目だから反りが合わないはずなのに。反論したことないな否定はよくあるから慣れてしまって否定されない方が居心地悪いくらいになった。裏方なら緊張もしないし黙って思いどうりにつれるから君のいる表通りにはこの格好で出ていく必要なんてないわ。カーテンを閉めて眩しい朝を締め出したい夜のままの方が性にあってるのね。

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