第36話 ファーストアルバム

私にとって大切なファーストアルバムがあなたにはまるで必要のないものだったなんて思いもしなかった。部屋に寝転がり漫画を読みながらのんびりだらだらしていた。一回読んだはずなのにまた読んでる。図書館と図書室のヘビーユーザーになりつつあるので毎日違う本を教室の机の上に出していた。ひどいときは4冊くらい積んであって2冊目に手がのびることもある。頭を忙しく働かせつづけてるので当然お腹は空く。チョコくらいなら常に食べられるようになっている。冷凍庫にひと箱以上冷えてあるのを勝手にとって勝手に食べる。安価なチョコを食べた後眠くなってきた。某大学と同じ名前のメーカーのチョコはしょうもない妄想の燃料にされて本望ではないだろう。私に買われたのが運の尽きだな。板チョコを冷蔵庫に戻して、続きを読もうと三角座りになった。相手を想うあまり傷つけるようなことを言ってしまう子がいたりわざと距離を置いたことで両方失くしてしまう話を読んで私はこの子と同じだけやる前に諦めてると気づくんだ。最終巻から買うからこれ早く完結しないかな。移籍した漫画を見てひとりごちる。最初は無邪気に繋がりを持とうとしただけなんだ。それなのにどんどん大事なものが増えてしまった。失くせないよ。「ねぇ私なら大丈夫だよ。ほら、早く行きなよ」「でも、本当にそれでいいの?」答えなんか二人ともわかってるはずなのに言わないとかずるいかもね。友情も恋も欲しいと言った幼い憧れが漫画のコマからはみ出してる。ずっと二人だけのコーヒーカップの中でくるくる外から回されてるみたいに次の曲へいこう。酔いそうなくらい目が回っても笑っていつまでも君とふざけあってたいのが恋より大事なこと。想うのに疲れたらベンチで休んでようか。地球が回ってるってことも忘れてしまってたけど万有の引力で引き付け合う僕らを誰が引き離すっていうのだろう。りんごもザクロも好きな方を捥いで食べればいいと思うよ。どっちを食べたって連れて行ったりしないから。何回繰り返しても再生できない1回転がきまるまでティーカップの中でかくれんぼしてもいいよ。見つかりそうになったら背中に隠れてもいいし。「ばかみたいだね」って君に笑われても何をしたって恋だったなら馬鹿になるくらい当たり前だ。さっきよりもキツく回す君の手と笑顔が鮮やかで真正面から見られるのがとても嬉しくなったんだ。「いつまでも遊んでいたい」と言わせるくらいに怖い気持ちは忘れて楽しんじゃおう。コーヒーはまだ苦い。

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