第35話 全部書いちゃうからね 2

ペンは剣よりも強し。それをどう解釈したら迷走するのか。書きあがった第1稿を前に佳乃は頭をなやませていた。問題点を取り敢えず洗い出してみたいと思う。まず1個目。何が言いたいのかわからないんだよ問題。次、行こう次。ヒロインが誰を好きなのかわかりにくい。彼氏どうなってるんだよ。3個目。全然話が進まない。何がおもしろくて書いてるのかわからない。やっぱね苦手でも男ださないとこの女絶対誤魔化そうとするよ知ってるもん。私だからねこいつ。今のところ彼氏、桜のひと、結月の間で揺れてるっぽいね。面倒なおんなもいるもんだ。結月は結ぶって字が入ってるからなんかうん、見えないはずの赤い糸が見えてくるね不思議。放課後廊下に響く足音をBGMにして私は文芸部の様子を見に行った。そこは一番少ない数でやっている部活だった。3人だから実質同好会だろ。男の先輩が3人もいてびびった。そのうちの一人が「生徒会に入りませんか」勧誘してきた。向いてないと思いませんか。来てしまったものはしょうがないので佳乃はしぶしぶ図書室に入った。一人一人に原稿用紙が手渡され、そこにプロットを書いてみろと言われた。普段プロットを使わずにとにかく書く私は面食らったが素直に書いた。皆の前で読まれる。「えーどれどれ」って感じだったのに面白がられてるし。「わたしはずっと友達だと思ってた人が友達だと思ってくれてないことにきづいた」百合っぽいかなり百合っぽい。だからってそれ以上の何かであるわけでもないんだ。友達のハードルが高めなだけで。もう何読まれたのか覚えてないけど持って帰れたのは良かった。どういうのが好きか完璧にばれた。もう私綺麗なままではいられない。嫌だ帰る。しかも最初っから横にいたのが結月だったのだ。普段教室で机が横だからってついてこなくてもいいんじゃない。私に興味があったのか。何もないぞ。お願いです結月様。百合でもなんでもしますから見逃してください。何でも書けるから。私が一番ノリノリで書いてた。ずっと書いていなかったから反動があったんだろう。あの原稿はいっぱいあるファイルのどれかに挟んであったと思うけど見たら思い出すのであるのかもわからない。ほかすにしても恥ずかしくて無理すぎる。結月は普通なプロット立ててた。普段やばい妄想してそうなのに意外だ。真面目そうな人が人付き合いに不真面目とかありがちだけど私には似合わない設定だったのかしら。えぇー。書かないよあれは。

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