第34話 全部書いちゃうからね

しかし皆無防備すぎやしないかい。見たまま全部かかれるとか考えてないのかね。もうちょっと緊張して。あーあもう書いちゃうからね。はい、そこの君。机に脚をのせてはダメだ。汚い。移動教室の時よそのクラスの男子が座ってるんですけどね。知ってたら椅子に座るんじゃないですか。大丈夫、イケメンじゃないよ良かったね。趣味人間観察。今日も教室は変人で溢れている。朝なのにお菓子をボリボリ食べながら駄弁る陽キャに見られてた気がしたので顔をそむけた。朝からおにぎり食べてる人もいます。遠くから来ると大変だな。ご飯食べてる暇ないんか。羨ましい。リア充(付き合ってない方)だ。欠伸を噛み殺しながら歩く朝は眠みが充満していてうつされる。ゴミ箱の中身がすぐいっぱいになるのは皆身体によくないものばかり好んで食べているからに他ならない。本日の本はこちらでございます。図書館で借りたやつだよ。シュリンクかかってるでしょ。あ、これ何ていうんかな。まぁビニールのカバーで表紙開けないようになってるじゃん。本文は見れるんだけどね。被写体がだるそうだからこっちのやる気まで下がってくよ。はぁそれにしても横のゆづりんはべっぴんさんだなぁ。毎朝見れるなんて嬉しすぎる。結月は登校するのが遅い。ギリギリに教室に入ってくるから満員電車の戦士かと思う。混んでる時間帯は避けてるからこうなってるんだろうけど。逆に彼女が来るのが早い日もありそんな日は私は決まって遅刻しかけてるのだった。ナニコレお互いに遅刻しないことを祈れば相手が遅れるってこと?門でネクタイとかボタンと言われてる人を横目に見ながら自転車を押している彼女の背中がありありと浮かぶ。まぁ今目の前にいるんだけど。私のお隣さんは可愛いので今日も横で寝顔を晒していられる。プリントを回すとき目が合うと目が笑ってる気がするしその目に私が映ってるととても嬉しい恥ずかしいような気持ちになる。本には書かれてないことが目を見ればわかるのでそれを全部私にくださいと思ってる。綺麗なものだけ集める視線がはじくものにはなりたくない。私だけのものにはならないあなたがとても好きです。結月を見てる私を見てる人は一番なんというか可哀想な人だと思うよ。特別な存在はそんなに多くないから。ワザと特別なままにしておきたくて他が目に入らないようにだってできるもの。理想を見ていたらほんとにそのように見えちゃう。誰の目にも触れないよう隠しておきたいくらいだけど無理ね。彼女を見つめるわたしの目は永久に揺るがない気がするの。

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