第4話 入学試験

ああ入試が来る。休み時間の気だるげな喧騒に混じり私のため息は埃塗れになって消えた。模試のときもらった小冊子が手元にあるが下手くそな絵に添えられた文章は馬鹿な私を落ち込ませるのに十分だった。体育会系のくせにいいとこ受かったのか。ギリギリに成績あげてまぁ。趣味が少ない人は羨ましいですねー。絵が下手な人は勉強はできてもあほとは言ってみても偏差値で比べられては意味がない。偏差値なんてないぞと数学の先生は言っていたけど。いちいち言わないで欲しい。傷をえぐらないで。ああ友達も恋人もゼロのままか。運悪。電車で入試前の申請をしに行くイベントがあったが彼氏も同じ車両に乗っており、最近お前ら仲悪いなと言われた。もしかしたら実は二人で会ってるかもしれないでしょ。まだ中学生だから不純だ。言い訳は山ほど思いつくけどほぼ私のせいだ。一人の方が目立たない分何も言われずに済んだはず。中学生はいちいちはやしたてるのが好きらしい。若いってことだろうか。求愛は動物に連なるから当たり前だと思うけど。ただ、当たり前すぎておもしろくないのが悪い。みんな恋愛を何だと思ってるんだ。非リアが思ってるほど楽しくないぞこれ。付き合うまでがピークとは本当のことだ。安定してしまう。私のように影が薄くて問題を起こさない生徒ならなおさら。所詮負けヒロインですから。スペック低くて悪かったわね。彼氏は男子校も同然の私学に私は女子高も同然の公立にそれぞれ進学する予定だ。この前受けた私学は雰囲気が怖かったから女子高はやめておいた。今ではあそこに通ってた方が拗らせなかったのではないかと色々思うけど。後の祭りなので気にしてないことにするしかない。波乱をワザと起こした方が長続きするのではないか。お互い争いを好まないから難しいけど高校に入ればお互いにお互いの友達を詮索することはないのでバレないように火遊びじゃなく、嫉妬できるのではないだろうか。これは当時の私には名案に思えてしまった。今ならやめておく。まだ可愛らしいところがあったのだ。今の友人は信じてくれなさそうだけど。オタ趣味なんて嗜むんじゃなかった。綺麗なころに戻りたい。見た目が真面目そうなのに変態だなんて屈辱的。女子がいっぱいいた方がオタ友達できるじゃんと軽く考えていた自分の頭を殴りたい。先生にも止められていたのに。そもそも文芸部がある学校なんて他にもあるし女子の文芸部なんて勘違い系ばっかに決まってるのに。本当に今はそう思う。

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