第3話 私がなりたい人 2

模試を受けてみた。志望校が決まらなかったためだ。夜中にようやくどこを志望校にするか適当に決めたので翌朝とても眠く会話もそこそこに私は家を出た。なぜか近隣の試験会場は一杯で私は遠く離れた駅の私立高校で受けることになってしまった。ああ受験票を見るたび恨めしい。なぜもっと早く申し込まなかったんだ。やっぱり私は馬鹿です。眠い、起きておける自信がないな。もういい、寝てしまえ。どうせ大学に行かないんだから。大学附属のこの学校は床がやたらと綺麗で私が入るであろう公立高校の床はおそらくこんな綺麗じゃないと思われた。学校の権威と誇りがあった。教室は人で溢れていた。自転車で来た人を見て、羨ましいと思った。私もこの辺が良かったよ。皆顔色良さそうだった。友達と仲良く談笑している姿をあちこちで見かけるが遠方からこの高校に入るために来た人は皆緊張していたからわかった。ここは有名大学の附属だから他府県にも附属高校があるし推薦くらいでしか私の行くお馬鹿な学校からは採ってもらえない。狭き門とはこういうことをいうのではないか。一時間目は私の愛してやまない国語だった。高校に行くと現国と古典に分割されると聞いたが本当に嫌なものである。どっちも好きな人はどうすればいい。便覧配られたら速攻読んでボロボロになるまで読み込んだからね。表紙は無事だったが裏表紙が外れかけた。予鈴の音まで違うように聞こえた。寝不足のせいであろう。隣の席は学校の私の隣と同じで男子だった。違うのは背の高さくらいで勉強させられてそうだった。その証拠にシャーペンの用意を済ませた彼は机に伏せて寝ている。きっと遅くまで勉強してきたのだろう。私のように早起きして遠くから来たかもしれないが。問題が配られ表紙をめくる音がめちゃくちゃ聞こえた。とても静かなので怖いほどだった。模試なんてしれてると高を括っていた私が馬鹿みたいじゃないか。だって問題も難しくないのに。偏差値なんて正確にはじき出されるものか。でもお金もったいないからさっさと終わらせよう。問題は佳乃にとって凄く簡単で笑いが顔に出そうになった。変だと思われたくないので口の内側を噛んでやり過ごした。社会のときラグビーの声がうるさくて頭を掻きむしりたくなったり、隣の男が解き終わってすぐ寝たのを見てこういう人って女子に興味ないんだよなと勝手にがっかりして気づいたら模試は終わっていた。帰りに長い階段の途中でセーラー服をみかけてちょっと嬉しくなった。

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