俺の想い人が神の使いな件について 最終回
帰ってきたナナちゃんは変わり果てた姿となり、俺のことどころが何もかも忘れていた……
なんてことになってたら本気でどうしようかと思ってたが、無事そういうのは回避して今日も平和だ。牛乳がうまい。
「にしても、もうすっかりその髪色も見慣れてきたな」
「そうですか? 私は音速で慣れましたが」
すっかり日常風景となったが、やっぱり茶髪のナナちゃんというのはどことなく違和感がある。どうやら何故か頭部だけ残ってた姉の頭を貰ったらしい……字面が既に色々ツッコミどころ満載なんだけどもうなんか慣れてきた。
しかし変わったところと言えば髪色が銀から茶色になったこと、あと若干童顔になったような気がしなくもないと言うレベルだ。毎日ナナちゃんの顔を見ている俺が言うのだから間違いない。きっと姉妹全員そっくりなのだろう。性格は違うらしいけど。
「どうせ姉妹全員見てみたいとか思ってらっしゃるんですよね」
「なっ、何で分かった!?」
読心機能は頭部交換の影響でなくなったはずだよな……まさか復活した?
「貴方の考えてることなんて大体分かります」
そんなに俺分かり易かったのか。いや、相手は超高性能ロボットだ、よく考えたら心が直接読めずとも大体のことはお見通しじゃないか。
「これなら読心あっても無くても変わらないなあ……」
「精度が全然違います。でも、どうせあれはもう使いませんから」
もう、って今まで何に使ってたんだろう。ス……追跡調査の仕事?
「ところでギルドのお仕事はどうなのですか?」
「ああ、うーん……まあまあかな」
戦いの仕事が犯罪者討伐くらいになったから実力の無い俺でもどうにかなるようにはなってきたが、ここ数年であの訳わからん謎システムが一層複雑になったせいでもう俺にもいまいちよく分からない。だが、最近は魔物の冒険者が増えてきたという。
一緒に採取とか行こう、とか言われたら……やっぱちょっと怖いかもな。
「そういや、こないだ監視の依頼引き受けたんだけどさ」
「監視? テストか何かのでしょうか」
「や、魔物の」
噂には聞いていたのだ。突っ立ってるだけで高額法主が得られる依頼がある、と。
どうも国がたまにギルドに依頼しているものらしいが、人気が高くてはあられているのを見たことすらなかったが……まさかトイレにその依頼用紙が落ちているとは。
それで引き受けたはいいが、何せ監視が必要なほどの魔物だ、よくよく考えたら生きて帰れるかすら怪しいような気がして俺は逃げ出そうかとも思った。
「その魔物に漫画上げたんだけどさ、しっぽ振ってた」
だが実際は本当に立ってるだけだった。別に襲ってきたりしないし、なんならお返しに魔導書貰った。読めないけど。
「……ああ、成程。そういうことですか」
えっどういうこと? もしかして心読まれた?
「ところでナナちゃん、さっきからそれ何やってるの?」
「ゲームです。なけなしの報酬として貰いました」
ゲームって……あの、サイコロとかカード使うやつじゃないのか? 何かぱっと見お菓子の箱を指で押しているだけの様に見えるけど……
「魔王の第二形態が妙に強いんですよ」
うんもう全然さっぱり分からん。魔王の第二形態って何事?
まあ、ナナちゃんが楽しんでるなら何でもいいけど……今度教えてもらおう。
そういえばこないだ中央国で飛行船の試運転があったらしい。
「先月から始業された魔物用学校、魔物の親の間で評判らしいですよ」
そんな話も聞いたような気がしなくはない。なんせ俺はニュースとか疎い方だからな、平和交渉があったってのも次の日に知ったくらいだし。
「そのうちさ、人の学校と合併したりしないよな」
「すると思います。教えている内容は全く同じものですから、あと数十年後には」
そうなるともし俺に子供がいたとしてもクラスメイトが魔物だったりはしないのか。いや、そもそも俺は子供を持てるのか? 養子っていう選択肢もあるか……
「科学技術も発展するんだろうな。例えばその、電話ってのが普及したりとか」
すっかり日常化してたけど、ナナちゃんがいつも使ってるその黒い電話ってどこから持ってきたんだ? 天界?
「となれば、逆に魔法は廃れるのでしょうね」
「それはちょっと寂しいな……俺は魔法使えないけど」
想像がつかない。魔法が無くなって、科学が支配した世界で、人と魔物が何ら変わりなく生活している……どっかのラノベにありそうな内容だ。
それが、あと数十、数百年すれば現実になるだなんて。
ま、未来のことなんか分からないし。そんな事より今だな。
「ということでナナちゃん、結婚してください」
あっ、思わずプロポーズしてしまった。ということでって何だ。
ほらナナちゃんフリーズしてる……って、本当にフリーズしたわけではないよね? なんか変なモーターみたいな音聞こえてくるけど!?
「……はい」
良かった動いてた、って
「えっ」
ナナちゃんと婚約してしまった。
つまり、俺は神の使いの夫になった。
俺の想い人が神の使いな件について 完
――――――――――――――――
ここまでお読みいただきありがとうございました。
以上でこの三部作は完結です。
「伝説の勇者じゃないのに王様に魔王倒せって言われた」
「伝説の勇者だから魔王と平和交渉することにした」
「伝説の勇者が盗賊に世界救えとか言ってきた」
※明日は番外編のssを公開します。
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