第28話 妹強襲

 風呂のドアが開き、直斗の目の前に現れたのは、あられもない二人の裸体。

 一人はショートのオレンジ色のボブカットを揺らして、そのたわわな胸を隠すことなくむんっと張っている発育の良い姉妹の姉である秋穂。

 そしてもう一人は、華奢な身体つきながらも、お淑やかさのある黒髪を揺らして、恥ずかしそうに頬を染めながら、腕で胸元を隠す妹の雪穂。

 直斗のハイテンションはいきなり強襲してきた妹たちにより一気に吹っ飛んだ。


「な、ななな何してんだお前ら⁉」

「何って、部活で汗かいて気持ち悪いから、お風呂にはいろうと思って……」

「だからって、俺が入っているときに入って来なくてもいいだろ!」

「今すぐにシャワー浴びたかったんだもん!」


 唇を尖らせながら、駄々だだをこねる秋穂。

 まあ、秋穂は部活で汗をいているのは本当のことなので、かろうじて許せるけども……。


「ってか、どうして雪穂まで入ってきてるんだよ⁉」

「そっ……それは……兄さんとの新妻プレイを楽しむためです!」

「に、新妻プレイ?」


 雪穂の口からいきなり放たれた突拍子もない言葉に、直斗は首を傾げる。


「そうです! 帰ってきて私は、『お帰り兄さん、ご飯にする、お風呂にする、それとも……わ・た・し?』っというプレイを期待してたのに、兄さんが上の空なのが悪いんです」

「いやっ……まずそんなプレイを雪穂にご所望していませんけど⁉」


 そもそも、新妻プレイってなんだよ……。

 はぁ、せっかくいい気分だったのに台無しだ。


「まあ細かいことは気にしないでさ。一緒にお風呂入ろうよ!」


 そう言って、秋穂と雪穂は何事もなかったかのように、お風呂場へ足を踏み入れてくる。

 秋穂はバスチェアに腰かけて、シャワーを出して身体を洗い始め、雪穂は浴槽からお湯を軽く身体に掛け湯して、浴槽内へ入ってこようとする。


「待て待て待て、俺はもう上がるからな!!」


 前回のまいだけはごめんだ。

 直斗は危険を察知して、すぐさま立ち上がり、二人の間をすり抜けるようにして、風呂場を後にしようとする。

 しかし、無常にも両腕をガシッと掴まれてしまう。

 左手を秋穂が、右手を雪穂が力いっぱい直斗を絶対に離さないといわんばかりに掴んでいた。


「兄さん。だめですよ?」

「直斗兄。だめだよ」


 にっこりと笑みを浮かべつつも、力一杯直斗の腕を掴んでくる姉妹達。

 ヤバい……妹たちからの圧が凄い。

 それでも、絶対に避けなければならない戦いがここにはあった。

 直斗の方が力では上、心苦しいけどここで負けるわけにはいかない。


「離してくれ! こういうのはごめんなんだよ!」


 手をぶんぶんと振って、妹たちから逃れようとする。


「ちょっと直斗兄。そんなに抵抗することないじゃん!」

「そうですよ! この前だって興奮してくれたじゃないですか!」

「それが嫌なんだよ!」


 そうならないために、一緒に入るのは遠慮しておきたいんだってば!


「別に直斗兄の息子がおっきくなっても私は気にしないよ」

「そうです! むしろ健全な反応です! 誇りに思ってください」

「勘弁してくれぇぇぇぇ!!」


 直斗が今日一番の大声を上げながら、大きく手を振り下ろした時だった。


 ぷにゅん、コリッ……。


「あっ……♡」

「あんっ……♡」


 二人の嬌声きょうせいあえこえが風呂内に響き渡る。

 咄嗟とっさに手を止めて、恐る恐る後ろを振り返ると――

 直斗は指先で、彼女たちのおっぱいの頂点にあるピンク色の部分を指でタッチしていた。

 二人とも頬を真っ赤に染めて、唖然あぜんとしている様子。

 それぞれおっぱいの大きさは違うけど、その頂点の感触もまた少しずつ違っていて――

 って、いかーん!!!!!


「ご、ごめん!!!」


 直斗は瞬時に謝って、スポっと手を引き抜き、一気に風呂のドアを開けて風呂場から出ていく。


「あっ、兄さん⁉」

「直斗兄!」


 二人の制止の声を無視して、裸体妹たちの牙城がじょうから抜け出した直斗。

 後ろ手に素早くドアを閉めて、ようやく直斗はほっと息を吐く。


「はぁ……」


 にしても、不可抗力だったとはいえ妹達のとんでもない部分をタップしてしまった。

 指先に、先ほどまでの独特の感触が残っている。

 なんだかすごい新鮮で……って、何を考えてるんだ⁉

 そして、ふと直斗は下半身が妙に熱を帯びているような気がして下を覗くと……見事に直斗のリトル直斗がラージサイズにメガ進化。

 この姿を妹たちに見られたら、また舐め回すような目つきで凝視されるに違いない。

 妹たちが呆けている間に、直斗は急いでバスタオルを巻いて、脱衣所から部屋へと戻っていった。

 全く、いつからうちの妹たちは、兄に軽々と裸を見せてくる痴女ちじょになってしまったんだ。


「って、そんな裸を見て興奮しちまう俺も大概たいがいだけどな……」


 なんだか、むなしい気持ちになってきて、ため息を吐かざる負えない直斗なのであった。

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