第24話 秋穂のいちゃつき
直斗はお風呂へ入った後、部屋のベッドに寝転がり、スマホでヨウツベ動画をダラダラと視聴していた。
すると、コンコンと部屋の扉が叩かれる。
「はい……」
「私」
ドア越しから聞こえてきたのは、秋穗の声だった。
スマホで時間を確認すると、時刻は深夜一時を過ぎている。
「こんな時間にどうした?」
「……入っていい?」
直斗の質問に答えることなく、秋穗は入っていいかどうかだけを尋ねてくる。
「おう……入ってきていいぞ」
特に部屋に入れてはならない理由もなかったので、快く入室を許可すると、秋穗は恐る恐る扉を開いて顔を覗かせた。
「お、お邪魔します」
秋穗はドアの隙間からするりとスレンダーな身体を室内へ
秋穂は入り口付近で身体をモジモジとさせ、どこか落ち着きがない様子。
また、秋穗の腕には枕が
秋穗の様子を見て、直斗はなんとなく次に発せられる言葉を察する。
そして、秋穗はすぅっと一度息を吐くと、意を決したように直斗が予想していた通りの言葉を発してきた。
「直斗兄……一緒に寝よ?」
唐突に妹から誘われる添い寝。
直斗は秋穗へ苦い笑みを浮かべることしか出来ない。
その表情を見て、秋穗はしゅんと
「やっぱりダメだよね……ごめん、今の忘れて」
薄い笑みを浮かべてくるりと
そんな彼女を、直斗は咄嗟に呼び止める。
「待って秋穗」
呼び止められてピタリと動きを止めた秋穗は、首を回して直斗を見つめた。
直斗はベッドの毛布をペラりとめくり、身体をずらしてスペースをあける。
「おいで」
そう言って、直斗は妹の要望を受け入れることにした。
雪穂と二人きりでイチャついてしまった手前、秋穗だけスキンシップを取ってあげないのはフェアじゃないだろう。
それに、秋穗と直斗の都合上、深夜帯しか家の中で一緒にいれる時間がないのだ。
なら、秋穗のスキンシップの取り方は、必然的に限られてくる。
それを受け入れないのは、直斗にとって彼女達を女の子として意識すると言った手前出来ない。
「ほら、明日も朝早いんだろ? ちゃんと寝ないと、明日に響くぞ」
「う、うん……」
直斗に急かされると、秋穗はちょこちょこと歩いて直斗のベッドの元へと近づいてくる。
「どうぞ」
「お、お邪魔します」
そして、持参してきた枕を置いてから、秋穗は自身の身体を直斗のベッドへ滑り込ませてくる。
秋穗がベッドに入ったことを確認してから、直斗はベッドボードの上でスマホを充電プラグに差し込み、目覚ましのタイマーをセット。
さらには、隣に置いてあったリモコンの消灯ボタンを押して、部屋の照明を消した。
辺りが真っ暗になったところで、直斗も身体を横にして秋穗の隣に寝転がる。
右隣に感じる、秋穗の温もり。
身体はくっついていないけど、暗闇の中で近くに秋穗の息遣いを感じる。
「ごめんね、急にこんなこと」
「ううん。別に気にしてないよ。中々秋穗にしてあげられることってないから、これくらいで良ければいつでも」
「……ありがとう」
暗闇に包まれる部屋に、沈黙が生まれる。
直斗はふと、昔のことを思いだした。
「なんか、こうして一緒に添い寝するのも久しぶりだな」
「あっ……私も今それ思った」
あれは、まだ二人とも恋愛のいろはも知らぬ小学生時代の出来事。
当時から秋穗はお外で男の子たちと一緒に鬼ごっこやドッチボールなどをして遊ぶ元気な女の子だった。
その明るい性格で、周りをどんどんと巻き込んでいくリーダー的存在で、好奇心旺盛なため、新たな秘密基地を探すために冒険に出かけたり、女の子なら苦手とする虫だって素手で簡単にひょいっと掴んでしまうほどに怖いもの知らず。
そんな秋穗にも、当時唯一苦手なものがあった。
雨風が吹き荒れる嵐に、ゴロゴロゴロと雷光を光らせる雷である。
「お兄ちゃん……」
「よしよし、大丈夫だよ」
嵐の夜を迎えるたびに、秋穗は涙目を浮かべながら直斗の部屋へ枕を持ってやってきて、よく一緒に寝てあげたのだ。
「そんな時期もあったね」
「あれから雷は克服したんだっけ?」
「まあ、今も怖いなとは思うけど、泣くほどまでではなくなったかな」
「そっか」
当時のことを懐かしく思い返しながら話していると、すっと秋穗が直斗の肩に頬を埋めてきて、顔をスリスリと擦りつける。
「直斗兄ぃー」
「どうした?」
「ん? えへへっ……何でもない」
そう言いながら、今度は直斗のお腹へ手を置いてきて、身体をべったりと密着させてくる。
「ったく……しょうがねぇな」
そんな
お互いの体温を感じ合いながら、しばらく無言で密着し合っていると、秋穗の方からスゥー……スゥー……っと寝息が聞こえてきた。
どうやら、心地良い深い眠りへと
「ふぅ……」
直斗は肩の力を抜いて、秋穗の頭を撫でる手を止めた。
しかし、ぎゅっとしがみ掴まれているので、このまま直斗も眠るしかない。
まあ、たまにはこうして懐かしさを覚えつつ眠りにつくのも悪くないだろう。
別に、やましいことをしているわけでもないしね。
そんなことを思いつつ、直斗もまぶたを閉じる。
思考を停止させ、眠気に身を任せるようにして、深い眠りへと落ちていくのであった。
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