第14話

「ま…まさ??」

叶奏の戸惑いを含んだその声に俺は我に返った

その瞬間俺は叶奏を抱きしめていることに気がついた

急いで叶奏から離れた

でも叶奏の顔が見れなかった

どんな顔をして向き合えばいいのだろう

どんな顔でこちらを見ているのだろう

なんと言い訳をすればいいのだろう

体が勝手に動いちゃっただけなので自分の意志ではありません??

別にそんなことするつもりなかったんです??

そもそも誰に言い訳してるのだろう

誰が俺に理由を求めたのだろう

…誰も求めていない

俺は俺自身に言い訳をしていただけだ

自分の行動を正当化するための言い訳を

自分で自分のことがわからない

何をしたいのか

何を考えているのか

ふと目をあげると心配そうな目でこちらを見ている叶奏と目があった

「ごめんまさ責めてるとかそういうんじゃなくてただびっくりしちゃっただけ…」

申し訳なさそうにそう呟く叶奏を前にして俺はいたたまれなくなって

「ごめん…ほんとごめん」

それだけ言って叶奏の家をあとにした


今冷静に考えると何に対して謝ったのかさっぱりわからない

しかもお邪魔しましたもありがとうも言わずに出てきてしまった

そんな自分を責めながらも"それどころ"じゃない俺がそこにいた

あの感情は何だったのだろう

暖かくて苦しくてそれでいて優しいようなよくわからない感情

簡単にわかりそうで複雑に絡まったような感情

そもそもこの感情に名前はあるのだろうか

いつもならすぐに忘れてしまうようなことなのに今日はこんなにも頭から離れない


俺は一体どうするべきなのだろう

一体何をすべきなのだろう

その答えははどんなに考えても見つからない

終わりのないトンネルの先の風景を想像するようだった




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