第6話 新たな出会い

独はムクっと起き上がり周りを見渡した。

(一体どれほどの期間寝ていたのだろう、寝る前の記憶が飛んでいてよく思い出せないな…確か家帰ってよぉ…いや、家帰ってたか?んな事よりここはどこだよ)

床は畳で壁に掛け軸、襖と障子で囲まれたいわゆる和室であり、全体は見えないがおそらく今いる場所は武家屋敷なのではないかと予想した。

彼はかけてあった布団を剥がし起き上がろうと手をつけたその時、

スーッ

襖が開き一人の人間が入ってきた。その人間はポニーテールで糸目であり独は最初(おん…男か?)と戸惑いつつも「えっ…と、助けてくれた…んですよね?なんと言えばいいのか分からないんですけど俺ェ倒れる前の記憶が無いんですよね、エヘへ。」

「…った。」

「ふぇ?」

「良かったぁー!もう目ェ開かない思ってぇ鷹くんになんて伝えようってメッチャ落ち込んでたところなんだよー!あぁゴメンね、僕の名前は 十前 褒姒(ここのつ ほうじ)。呼び方は何でもいいよ。」

十前は独の方へ近寄り持ってきた冷えたタオルを額に当てた。

「まだ安静にしててね、僕も実は君の事をあまり知らなくてね…鷹くんが昨日鬼の形相で『すまねぇボス読んでくれ!』ってなだれ込んで来てさ。しばらくしたら今度は僕に頭下げて『絶対に助けてくれ、頼む』って…だから僕も頑張って君を助けたってわけ」

十前は独が今までつけていたタオルを桶の上で絞りながら話していると、独はそれを見て少し申し訳なさそうな顔をした。

「あのー、その鷹くんっ人がよく分からないんですけど俺をここまで連れてきた人?でいいんですよね?それで安静にしてろって言われましてもここがどこだか分からないし、明日学校あるし…あれ?明日何曜だ?」

「結構記憶飛んでるみたいだね。僕が看病した時は外傷はそこまで無かったけど…そうだ、えぇとここはM県S市の僕の…というか僕達の家だよ」

「M県!?俺の住んでる場所I県ですよ!?そんな…一日で帰れますかね…俺?」

「そりゃ無理だ、帰らなくてよくなったからな。」

サーッ カンッ!

今度は障子が開き先刻の白髪の男が入ってきた。

「えーなんで無理なの?鷹くん。って鷹くん!?」

綺麗な2度見をした十前を無視してズカズカと独の方へ鷹と呼ばれた男は近づいた。

「あ、あなたが鷹…くんですよね。まずはありg」

「ちょっと待った」

鷹は独の話を静止させ自分の話を聞くよう促した。

「感謝をするのは俺の方なんだ、本当にありがとう。」

「で、でも…」

「分かってる、さっきの話を聞いていたが記憶をなくしているんだろう?だから俺がちゃんと説明する。」

鷹はその場に胡座をかいて独に今までの事を説明した。


「つまり俺は自分を犠牲にして貴方を守ったってことですか?」

「あぁ、お前は恐怖を克服し守られるべき者を逆に守った。だから俺は命をかけてお前を救わなきゃならないと判断したんだ。」

「ふぇー、そんなこと中々出来るもんじゃないよ。凄いね!」

独は自分が何故そんなことをしたのか思い出せずモヤモヤしていたが記憶にない限り確実な答えは出ないなと諦めた。

「ところで、気になることがあるんですが。帰らなくてよくなったって言ってましたが…それは、どうして…?」

「あ、それ僕も気になった!なんで?」

「そりゃおめぇ…使影者になったからだろ。」

「あーそれなら仕方ないね…って、ええ!?」

「あれ、言ってなかった?言ってなかったか。まぁいいや。」

酷く驚いている十前を見て独は目の前にいる鷹という男は多分自分を助けるためにとんでもない事をしたのだなと理解した。

しかし、それはたとえ恩返しだとしても記憶のない彼の心には少し後ろめたさというものが残ってしまっていた。

「あのー俺にとんでもない事をしたっていうのは予想できるんですが具体的に何をしたんですかね?使影者っていうのはなん…なんでしょうか?」

「あ、えーとね。使影者っていうのはギュムグッ!」

「ちょっと黙ってて。そのことについてはボス直々に話があるから付いてきて欲しいんだ。あ、十前さんは付いてこなくて大丈夫だから。」

十前の口に手を押し付け黙らせた後、鷹は独の手を差し出しボスの所へ来るよう促した。

独は知りたいことも多く断る理由はないなと思い、鷹の手を取って立ち上がり2人は部屋から出ていった。


そして取り残された十前はポツリ

「付いてこなくて大丈夫って冷たすぎない?看病とか治療したの僕なんだよぉ…」

と呟き頬を膨らませた。

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重影戦記 華麗なるサクラゴン @sakuragon

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