第××回綺譚鼎談〜知られざる世界の御伽噺〜 一庶民、タイピングの腕を買われて神の書記官になる

霧ヶ原 悠

前語り



 創世の神話はかく語りき。



 『遥かに遠く、古い昔々のこと。


 あるところに、寂しがりやの神さまがいました。


 ひとりぼっちだった神さまは、たくさんの神様を造って友達になりました。


 これが皆さんもご存知のプラシーヌやヴェネト、コッシヌなどです。


 そして友達と遊ぶためのおもちゃをたくさんたくさん造りました。


 最後に、友達とおもちゃで遊ぶための大きな箱庭を造りあげました。


 それが人間であり、動物であり、植物であり、大地と海が広がるこの世界なのです。


 神さまはもう寂しくありませんでした。


 神さまは箱庭でたくさんの友達と一緒に、おもちゃでずっと遊んでいました。


 ところがある日、たまたま神さまたちがみんな眠っていたときのことです。


 おもちゃたちが勝手に動き出してしまいました。


 人は子を産み、獅子は兎を狩り、木々はどんどん花や実をつけたのです。


 これには神さまたちも困りました。


 簡単に壊れてしまわないように、全てのおもちゃは頑丈に造っていたからです。


 このままでは、箱庭からすぐに溢れだしてしまいます。


 仕方がないので、神さまたちはおもちゃに長くても百年という寿命をつけました。


 そして、急いで箱庭を整理しました。


 落ち着いてから、もうこんなことが起こらないようにルールを定めました。


 そのルールが正しく働くように、それぞれの神様には役目が与えられました。


 琥珀色の瞳のプラシーヌは、権杖ワンドとともに大地の恵みを。


 ヴェネトは、輝く銀色の燭台とともに学問と知識を。


 凛々しいコッシヌは、ダイアモンドの王冠とともに勝利を司るというように。


 今もそれをこなしながら、天の園で箱庭を眺めてお茶をしていることでしょう。』



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