第12話 協力者たち……

 志郎さんの家での龍也さんとの会話は、いろいろな意味で僕に考えるべき事を与えてくれた。

「さて、もう10時近いけど泊まってくか?」

「帰らないと、明日は仕事なんですよ」

 立ち上がると僕は二人に頭を下げた。

「志郎、俺が送ってくよ。メット貸してくれるか?」

「バイクか?でもいいのか?」

「俺は帰るついでだからな。お前が行ったら、また戻らないといけないだろ?」

「龍也さん、いいですよ。僕、電車で……って、もしかして、終電過ぎてますか?」

 慌ててきた為、帰りの事を考える余裕がなかった。顔が赤くなるのがわかる。

「気を使うなよ。ついでにさっき言ってた奴にF駅のそばまで来るように連絡入れておくから、会ってくれないか?時間は取らせないからさ」

「……ありがとうございます」

「早く見つかるといいんだがな」

「龍也、気をつけてな」

 そう言うと、志郎さんは僕にメットを貸してくれた。

「大丈夫だよ。俺はいつだって安全運転だからな」

 ニヤリと笑うと、龍也さんは先に部屋を出ていった。

「志郎さん、ありがとうございます。……おやすみなさい」

 僕は急いで龍也さんの後を追いかけた。



 龍也さんの操るバイクで国道を走り抜け、僕らはアッという間にF駅の近くまでたどり着いていた。

「シン、バイクはどうだった?」

「気持ちいいです。こんななら、早く免許取りに行けば良かった。早速、取りに行きます」

「危ない乗り物なのも確かだけど……足がないと動きが取れない時もあるからな。そろそろ来る頃なんだが」

 龍也さんが時計を確認しようとした時だった。

「龍兄ぃ、ごめん!」

 そう言って現れたには小学生といってもいいぐらいの小柄な少年だった。顔立ちもずいぶんと幼く見える。この子が連絡係なんだろうか?

「急な話だったからな、仕方ないさ。お袋さんにはちゃんと言ってきたか?」

「大丈夫です、龍兄ぃに宿題教わりに行くって言ってきましたから」

 龍也さんは、どうやらこの子の家族とも親しいようだ。

「そうか、今度会った時に、ちゃんと口裏合わせとかないとな」

 二人の会話はまるで本当の兄弟のようだった。年は10歳以上離れているハズなのに……でも、僕と龍也さんでも変わらないぐらい離れてるもんな。

「シン、紹介するのが遅れたけど、こいつは巧。俺の弟みたいなもんだ。仲良くしてやってもらえると助かる」

「はじめまして、シンさんって呼んだらいいですか?」

「こちらこそよろしく、巧君でいいのかな?僕のことは好きなように呼んでくれたらいいけど……それだと時代劇みたいだよね」

 苦笑いが浮かぶ。

「巧でいいですよ。……シン兄ぃ」

 そう言って巧は無邪気に笑った。

「了解。よろしくね、巧」

「自己紹介が済んだところで、巧にやって欲しい事を説明しとくな」

 龍也さんはそう言うと、ヒロミの事件の事は、何一つ巧に伝えることなく、普段連絡の取りにくい自分に代わって、僕からの連絡を受ける事。そして、自分からの連絡を僕に伝える事を巧に頼んだ。

「初対面で無理なお願いだとは思うんだけど……いいかな?」

 そう訊ねたのは、何も話さないで、連絡係をしろというのはムシが良すぎる話だと思ったからだ。

「構いませんよ。龍兄ぃが話さないって事は、知る必要がないって事ですからね。それに知ってしまえば、それなりの責任が出てくるでしょうしね」

 何事もないように巧の口からでたセリフは志郎さんが僕に言った言葉だった。

「巧……志郎さんを知ってるの?」

「何回か会っただけですよ……龍兄ぃと志朗さんは僕の目標ですからね」

 本人を目の前にテレる様子もなく巧はそう答えた。

「巧、俺が恥ずかしいじゃねぇかよ」

 苦笑いを浮かべると龍也さんはバイクにまたがった。

「巧、よろしく頼むな」

「了解です」

 巧は僕からマスターの店の場所を聞くと、敬礼をして帰っていった。

「シン、N駅でいいのか?」

「はい、ありがとうございます」

 お礼を言いながら、急いで龍也さんお後ろにまたがる。

「シン、まだ何も進んじゃいない。それにな、礼はいらないよ。友人のために何かするのは当然の事だからな」

 龍也さんは、僕がメットをかぶったのを確認すると、シールドを下ろし、バイクをスタートさせた。

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