第11話 探偵?登場……後編

「シン、連中は深く潜ってる。そのままおとなしくしてくれると良いんだがな……見つけるのには時間がかかりそうだがな」

「志郎、今日つかんだネタだがな、犯人はおそらく四人だ。シンの彼女が休学する少し前に、そんな事を自慢げに話してた連中がいるそうだ」

「!?どこでですか!!」

「シン、落ち着けよ。噂の類と変わらないんだよ。情報ってのは裏が取れなきゃ、ただの噂話だ。ましてや、それで連中を見つけたとしても、やってないと言われたらお終いだ」

「そんな……」

「龍也!言い過ぎだだ。……でもな、シン。龍也や俺が犯人を見つけた時、お前はどうしたいんだ?」

「……」

「殴っても……たとえ殺したとしても、彼女の傷は癒えないんじゃないのか?」

「シン……どうするのかはお前の自由だが……彼女をこれ以上苦しめるような事はするな」

「……はい」

 小さくうなづくしかなかった。

 二 人の言うとおりなのだ。犯人を見つけたところで自己満足でしかない。殴り殺したところでヒロミの傷が消えるわけじゃない。きっと、ヒロミもそんな事は望ん じゃいない……じゃあ、僕はどうしたいんだろう?悲劇の主人公になりたいだけ?違う!僕は彼女を傷つけた犯人が憎いだけだ……犯人が謝罪すればいいのか?……わからない。……でも、謝罪されたところで、僕は許せない。

「シン……大丈夫か?」

 心配そうに志郎さんが僕の顔を覗きこむ。

「大丈夫です、すいません」

「ところで、ここまでどうやって来たんだ?それも、あんなに慌てて……免許はなかったよな?」

「電車で来ました」

 僕は映画館での出来事を二人に話した。



「シン。尚更、犯人探しは俺達に任せて、彼女の傍にいてやれ。傍にいるだけでも、彼女の精神的負担は全然違うハズだぞ」

「志郎だけじゃなく、俺も協力してるん。一日でも早く見つかるように全力を尽くすからな」

「僕も何かしたいんです。二人に任せきりじゃなくて……」

「週一でだが、個人的に武術を教えてる奴がいる。彼女の家からは、そう遠くない場所に住んでる奴だ。何かあったら、そいつに連絡して欲しい。携帯の番号も教えておくが、出れる時間の方が少ないからな」

 龍也さんは、苦笑いを浮かべ肩をすくめる。

「連絡?」

「そうだよ、彼女の口から些細な事でも聞くことが出来るかもしれない。彼女からではなく、彼女の友人から聞けるかもしれない。それは俺達には出来ない事だからな」

「その人はどんな人なんですか?」

「まだ中二の小僧だよ。俺の助手みたいなもんだな。仲良くしてやってもらえるとありがたいんだが、またここに来る時にでも連れてくるし……今日会うか?」

「そうだな、早い方がいいだろ。龍也、連絡出来るならしてやってくれないか?」

「いいんですか?」

「そうだな、連絡が取りたい時に取れないと困る事もあるだろうしな」

 龍也さんは携帯を取り出すと、その人物に連絡をいれた。

「志郎さん、すいません。急に訪ねてしまって」

「構わないさ。ただ留守にしてなくて良かったよ」

 志郎さんは、留守でなかった事を何か感謝するようにニッコリ微笑んだ。

「今日顔合わせをして、ここで詳しい打ち合わせをする事になった。シンは大丈夫か?」

 電話を終えた龍也さんが切り出す。

「僕は構いませんけど、志郎さんの都合はいいんですか?」

「龍也はここの鍵を持ってるからね。俺が仕事だったとしても大丈夫だよ」

「ご迷惑ばかりかけて、すいません」

「謝る必要なんてないハズだぞ?なぁ龍也」

 僕を見つめ、二人は優しく微笑んだ。

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